mixiユーザー(id:3341406)

2022年08月30日11:00

207 view

ブレイディみかこ著『女たちのテロル』

ブレイディみかこ(1965- )が書いた『女たちのテロル』を読む。
フォト

初出は岩波書店の「図書」、2017年4月号〜18年9月号に連載。補筆、書き加えの上、2019年5月に同社より単行本が発行された。

ブレイディみかこは1996年より英国のブライトンに住む保育士兼ノンフィクションライター。

「女たち」とは、金子文子(1903-26)、エミリー・デイヴィソン(1872-1913)、マーガレット・スキニダー(1892-1971)の3人、共に約100年前の時代に海を越えた東西世界で女性の自立や民族の独立のために戦った。

金子文子は明治〜大正にかけた時代に最貧家庭に生まれ、出生届けもされず戸籍がないまま、虐待を受けて育った。
しかし、日本各地及び朝鮮半島を巡りながら独力で学び、本や教育からでなく、自前で思想を確立していった。天皇制を否定し、アナーキズムを自らの信条として社会活動をした。

関東大震災(1923)後の社会動乱の中で、9/3、同志で恋人であった朴烈(パクヨル/1902-74)と伴に治安警察に連行され、1926年、大審院により大逆罪として死刑判決を受ける。

同じ1923年の9/16、大杉栄と憲兵に捕縛され、裁判も受けないままその日のうちに甘粕正彦等によって虐殺された伊藤野枝(1895-1923)という作家・婦人解放運動活動家の女性がいた。
伊藤野枝については、今年幾度か書いた。
以下参。
・「『美は乱調にあり〜伊藤野枝と大杉栄』瀬戸内寂聴」
 https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1982012884&owner_id=3341406
・「大杉栄と伊藤野枝の墓」
 https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1982019506&owner_id=3341406
・「『諧調は偽りなり』瀬戸内寂聴」
 https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1982513346&owner_id=3341406

金子文子は判決直後の4/5、恩赦を受けて無期懲役に減刑されるが、朴烈と引き裂かれ宇都宮刑務所栃木支所に移送、思想転向の要求を受けるも「わたしはわたし自身を生きる」として拒否、7/23に獄死した。23歳だった。

刑務所の発表では自ら縊死したとの事だったが、結局真実は不明のまま。
文子の同志であった栗原一男は、刑務所の共同墓地に埋められていた彼女の死体を掘り起こして引き取った。その腐乱した遺体の様子は『獄中手記〜何が私をこうさせたか』(金子文子)に寄せて書いている。伊藤野枝のそれを思い出す。

『金子文子歌集』より

 手足まで不自由なりとも
 死ぬという、只意思あらば
 死は自由なり

鶴見俊輔は文子を「国家に対してひとり立つもの」と評した。

朴烈は減刑拒否したが、無視され、千葉刑務所で服役、最後は秋田刑務所で太平洋戦争終戦を迎えた。


ブレディみかこは金子文子の行動と思想を追いながら、並行する形で、エミリー・デイヴィソンとマーガレット・スキニダーについて書いていく。

エミリー・デイヴィソンはイギリスの女性参政権運動の活動家である。戦闘的な手法も辞さず、過激な行動を重ね、9回刑務所に収監された。所内ではハンガーストライキを行い、対して刑務所は強引な強制摂食を行った。デイヴィソンはそれによって精神的トラウマを負った。
2013年にはエプソムのダービーで、疾走するジョージ5世の所有馬アンマーの前に立ちはだかり、大怪我をし、4日後、頭蓋骨骨折と内傷のために没した。40歳だった。
デイヴィソンの活動と死はNHK-BS「映像の世紀プレミアム」第3集『世界を変えた女たち』で採りあげられ、私は以下レポートした。
 https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1959373997&owner_id=3341406


マーガレット・スキニダーはアイルランド人の教師で、イギリスからの独立を目指したイースター蜂起(1916)では、偵察兵、伝達兵、スナイパーとして戦い負傷した。
抜きんでた狙撃の名手だったようだ。
女性参政権運動にも参加した。
「私たちは命を危険に晒す権利においても男性と同等である」と主張した。
男女平等は、アイルランド共和国憲法(1937施行)は歴史上初めて参政権平等の原則を盛り込んだ。

3人は自分自身として生きる事を決して手放さなかった点において、共通している。
金子文子は僅か23歳で死んだが、3人で語られる事で、女性史の中にしっかりと位置づけられる。是非再評価したい。


〈参考資料〉
中日新聞書評「女たちのテロル〜支配を拒み闘った文子たち」
 執筆 梯久美子
 発行 2019年8月
 
1 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2022年08月>
日 月 火 水 木 金 土
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
28293031