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2019年01月30日11:15

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注文の多い料理店

私は、先に、「宮沢賢治の小説は、昔話ではないけれど、非常にリズム性のある作品である」と述べたが、小説というより童話といったほうがいいかもしれない。しかし、大人が読んでもロマンティックであるし、自然のこと、命のことなど多くのことを考えさせる力を持っている。だから、哲学的な童話と呼んだ方がいいかもしれない。
先に紹介した、「狼森と笊森、盗人森」「セロ弾きのゴーシュ」「氷河鼠の毛皮」「北守将軍と三人兄弟の医者」「なめとこ山の熊」にひきつづき、その他の素晴らしい作品を紹介したい。

注文の多い料理店


ある2人の若い紳士が猟犬を連れて山に狩りに出掛けた。しかし、待てども暮らせども何の獲物も出てこない。
あまりの山の奇妙さに、案内人とははぐれ、猟犬は泡を吹いて倒れてしまう。
「何の獲物も捕れず、犬も失うとは大きな損失だ」と下山を決意した2人の前に、突然、立派な洋館が現れる。
「ただでうまい料理が食べられそうだ」と腹をすかせた2人は「山猫亭」の中に足を踏み入れたのだった。
入った2人を待っていたのは「太った人や若い人は大歓迎」という看板。これを見た2人は「自分たちは若くて太っているから歓迎されているのだ」と思い込み、意気揚々と山猫亭に踏み込んだ。
進んでも進んでも店の中は広く、なかなか奥までたどり着かない。
そのうちに、「髪をとかして泥を落としてください」「鉄砲を置いてください」「帽子とコートと靴をお脱ぎください」などの指示が現れた。「これはよほど偉い人が来ているに違いない」と都合よく解釈し、指示通りにしていく。
しかし、最後の指示は「身体に塩をぬりこめ」というもの。さすがの2人も自分たちが調理されることに気づき、ガタガタ震えだす。
扉の向こうからは楽しそうな声が聞こえ、もう助からないと思ったその時。戸を突き破って猟犬が躍り込んでくると、「山猫亭」は雲のように消えてしまった。
はぐれた案内人とも合流し、安堵した2人の紳士であったが、あまりの恐怖で顔はくしゃくしゃになってしまい、2度と元に戻ることはなかった。
 https://www.youtube.com/watch?v=HPKH5jEhrlE




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