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2022年10月08日21:50

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本●「有栖川有栖の鉄道ミステリー旅」

本●「有栖川有栖の鉄道ミステリー旅」(山と渓谷社)
有栖川有栖・著

読了。

この人も鉄道ファンだったのか!!
ミステリー作家・有栖川有栖の鉄道エッセイ集。
まえがきに続く第一章「ヰタ・テツアリス」に次のようなくだりがあった。
著者が幼少のころ、両親にふるさと四国高松へ向かうため、山陽本線に乗ったおりのこと・・・・

“最も好きだったのは、船坂峠を越えて岡山県に入ってまもなくの三石(みついし)付近、緑の中に赤っぽい煉瓦の煙突が聳えている眺めだ。耐火煉瓦の工場とは判らず、何を造っているのだろうと気になって、いつか降りてみたいような、降りるのが怖いような、不思議な気持ちになった”

と、ある。
三石は先月訪れたばかり。
しかも、山陽本線から眺めた三石の光景に、「降りてみたいような、降りるのが怖いような、不思議な気持ち」というのも、私が抱いた印象ときわめて近い。
撮り鉄や鉄道のメカ好きでなく、ただたが車窓からの風景を眺めているだけで幸せという乗り鉄で、宮脇俊三の大ファンというのも私と同じだ。
波長が合ったので、最初から最後まで、ページをめくるのがとても楽しかった。
大半が鉄道旅行記だ。
そのなかに、大阪環状線についての一編がある。
大阪環状線には何度も乗っているが、次のような事柄にはまったく気づかなかった。

“最後に環状線の宝探しを。沿線には、屋根に四桁の数字を掲げた家が点在する”

という。
明日にでも、宝探しへ出かけたくなった。

ところで、有栖川有栖は若くして結婚し、新婚旅行も北海道の乗り鉄旅だった。
大阪から寝台特急で青森、青森から青函連絡船、その後も函館本線、石北本線、名寄本線、湧網線を経由して網走まで、さらには釧網本線、根室本線と、新婚旅行というより、鉄ちゃんの北海道乗りつぶしだ。
奥さんいわく「ずーっと電車に乗ってたよ」とのこと。
ふつうなら、成田離婚ならぬ、網走あたりで乗り鉄離婚になりそうだが、その奥さん、「電車に乗っているのが好き」、それ以上に電車で眠るのが好きで、ほんとうによく寝るのだそうだ。
著者がせっかく仕入れた沿線の豆知識を披露しようとも、まもなく絶景ポイントだよと教えようとしても、奥さんはすやすやと寝息を立てている。
でもね、ガタゴト揺られるローカル線に乗り、陽だまりの猫のように、肩にもたれる愛妻の安心しきった寝顔を見るなんて、男冥利に尽きるというものだ。
なんともうらやましいかぎりの1冊であった。



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