2020年10月18日(日)
『薬の神じゃない!』(2020年)
監督:ウェン・ムーイエ
矢場町・センチュリーシネマ
まさか、マスクで泣くなんて。
舞台は2000年代初頭の上海。
小さな店で、インドからインチキ臭い強精剤を輸入販売しているチョン・ヨンが主人公。
ある日、チョンのもとへ、白血病患者のリュ・ショウイーがあらわれた。
リュが言うには、白血病の高価なスイス製の正規薬は、貧乏人には手が出ない。
ところがインドではジェネリック薬がつくられている。
リュはチョンにインドからジェネリック薬を密輸してほしいと懇願した。
しかし、密輸がばれると重刑だ。
渋るチョンだが、ほとんど店の売上がなく、経済的には火の車だった。
結局、チョンは警察より目先の金の誘惑に負け、インドへ出向くことになるのだが・・・・
見るからに貧乏臭いおっさんが馬鹿笑いしてるポスターに、見ようかどうか悩んだが、見て大正解。
チョンとリュに加え、ポールダンサーのシングルマザー、敬虔な神父、髪を黄色に染めたチンピラと、奇妙な仲間が一人ひとりと増えていくわくわく感。
センチメンタルなメロディが流れるなか、夕陽でオレンジ色に染まる波止場で、チョンとチンピラのあんちゃんが語り合う。まるで赤木圭一郎が出てくるような古い日活映画だ。
いまどき小恥ずかしくなるようなこんなシーンを堂々と撮っていることに、好感がもてる。
基本はコメディ、楽しく笑わせながら、ラストのマスクで号泣だった。
ジェネリック薬による患者の救済という社会問題を、貧者の視点に立ち、ベタな娯楽映画として描ききる。
快作。
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