mixiユーザー(id:6810959)

2020年04月24日21:07

160 view

映画日記『太陽の蓋』『バルタザールどこへ行く』

2020年4月24日(金)

『太陽の蓋』(2016年)
監督:佐藤太
チャンネルNECO【録画】

東日本大震災時を舞台に、ひとりの新聞記者を狂言回しにして、ときの官邸や福島原発の従業員とその家族などを描く群像劇。
ドラマの大半が、東電からの情報がなかなか上がってこない中での、官邸のいらだちにあった。
ということで、一見すると情報をひた隠しにした東電を悪者に仕立てて、それで終わりのような映画のようにおもえる。
しかし、本作の核心は、震災から数年後に当時の官邸の中枢にいた官僚に、新聞記者が問うシーンだった。

「・・・・十分な情報があがってきたとして、いったい何が出来たのか?」

劇中の言葉を借りれば、原発というのは人間が作り出してしまった「怪物」なのだろう。
そして原発というもの自体が、何かやましいことでもあるのだろうか、何かにつけ隠蔽体質に包まれている気がする。
コロナ騒ぎに忘れてしまったが、長年にわたって原発にまつわる不可解な大金の流れが発覚したのは、ようやく最近のことだった。
陰湿なベールに包まれた怪物に、どんな断を下すべきなのか?
そんな問いかけの映画だった。

狂言回しとなる新聞記者を北村有起哉が演じていた。
北村有起哉が、今村昌平の映画に多く出演していた文学座の名優・北村和夫の子息であることをつい最近知った。
それを念頭に彼の声を聞くと、お父さんにそっくりだった。


『バルタザールどこへ行く』(1966年)
監督:ロベール・ブレッソン
NHKBSプレミアム【録画】

無垢な少女・マリーからバルタザールと名付けられたロバの生涯を描く。
マリーとのつかの間の幸せ時間の後に、流浪の身となったバルタザールに苦難が日々が襲いかかる。
チンピラの不良青年から尻尾に火をつけられ、アル中男からもいたぶられ、やがて飼い主となった農夫からは鞭で叩かれどうしだ。
いっぽう、ともに幸せな時間を過ごしたマリーにも苦難が襲いかかる。
チンピラ不良青年のなぐさみものになったあげく、捨てられてしまう。
それからは転落するばかり。
やがて、バルタザールは理不尽な流れ弾にあたって、その生を終える。

この前見たロベール・ブレッソン監督の『スリ』(1960年)には、かすかではあるが希望があった。
しかし、『バルタザールどこへ行く』には、どこにも救いがない。
正直、私の体質とはまったく合わない映画だ。
ただし、世界は残酷だ、という冷や水を浴びることは、ときどき必要なことだとおもう。

取っ付きにくい映画だったが、最後まで見ることができたのは少女・マリーを演じたアンヌ・ヴィアゼムスキーの魅力につきる。
2月に見たタル・ベーラ監督の『サタン・タンゴ』に登場したボーク・エリカ同様、不幸を背負ったような顔立ちに、まいってしまった。


5 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2020年04月>
   1234
567891011
12131415161718
19202122232425
2627282930  

最近の日記