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2023年01月15日23:43

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映画日記『十三の眼』

2023年1月15日(日)

『十三の眼』(1947年)
監督:松田定次
アマゾン・プライム

前年に公開された『七つの顔』(1946)に続く、片岡千恵蔵の多羅尾伴内シリーズ第2作。
都内を震撼させた凶悪な連続強盗事件、その捜査中にふたりの刑事が犯人の強盗一味が放った凶弾によって殉職した。
そのひとり、ベテランの松川刑事は七つの顔を持つ男・多羅尾伴内の恩人だった。
わずかな手がかりから伴内は「歓楽のデパート・ユニオンガーデン」が強盗団のアジトとにらみ、キザな成金紳士に変装し乗り込むことに。
やがて、伴内の前に七人の男たちがあらわれる。
その首領の片目は義眼だ。
七人組の強盗団、それは「十三の眼」だった・・・・

不思議なことに、面白い!!
何がと言われても困ってしまうが、ひとつには敗戦直後の世相があらわれていること。
冒頭で、強盗団が刑事ふたりを殺してまで盗んだ品物というのが、なんと「砂糖」だった。
強盗団配下の女が、「あたい、砂糖には不自由しないんだ」みたいなセリフを誇らしげに言うシーンも出てくる。
ふたつめが、主人公の多羅尾伴内こと藤村大造は、かつて悪に染まった大泥棒だったが、殉職した松川刑事に諭され、いまは悪と戦う正義と真実の人になったという彼のプロフィールを初めて知ったこと。そうだったんだ。
みっつめが、ちょっとイカしたどんでん返しがあったこと。
どんでん返しというほどでもないが、クライマックスで伴内たちに寝返った強盗団配下のふたりの女が、裏切り者とばかりに拳銃で撃たれてしまう。
その直後、刑事を撃ったのはお前たちだなと詰め寄る伴内に、義眼の首領が「どこに証拠がある」と居直ると、撃たれた女がむっくと起きて言い返した。

「証拠ならあるわ。私のからだに、ふたりの刑事さんを殺した拳銃の弾が入ってる」

おもわずテレビに向かって拍手しそうになった。
いまになって考えれば、べつに身体から摘出しなくても、強盗団が捕まってしまえばすぐ判ることだが、畳みかけるクライマックスの中で、彼女の啖呵が切れ味の良いドンデン返しに思えてしまった。
いっぽう、前作の『七つの顔』同様、本作でも多羅尾伴内が事件解決のために大金をバンバンとばらまいていく。経費として警察に請求するわけでもなさそうだ。
あの金が全部自腹だったとしたら、泥棒時代によっぽど溜め込んだみたい。

ここからはまったくの余談。
悪役の義眼の首領を演じていたのが、戦前に『落第はしたけれど』や『大人の見る絵本 生れてはみたけれど』などの小津安二郎作品によく出ていた斎藤達雄だった。
他にどんな映画に出ていたのかと、いつものように日本映画データーベースを眺めてみたら、戦後の作品ではあるが『吸血蛾』(1956)というのが出てきた。
なんとなく新東宝っぽいなあとおもいながらクリックすると、監督が中川信夫だった。
やっぱり新東宝かとおもったら、なんと東宝だった。
たしかに、出演者欄には斎藤達雄といっしょに東野栄治郎、千秋実、大村千吉、中北千枝子といった東宝系の俳優たちの名が並んでいた。
よく見ると、原作が横溝正史だった。金田一耕助ものだ。
ここからが余談の核心。
金田一耕助を演じていたのが、なんと池部良だった。
以前、高倉健が金田一耕助を演じた『悪魔の手毬唄』(1961)を見たことはあるが、まさか『昭和残侠伝』シリーズで、健さんといっしょに殴り込みに行く池部良も金田一耕助俳優のひとりだったとは、おもってもみなかった。
まあ、どうでもいい話だが、なんとも愉快な気分。



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