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2022年12月17日22:54

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映画を見ない日の出来事360

映画を見ない日の出来事360

先週末に「銀幕の至宝 新東宝の軌跡」(コアラブックス)というムック本を読み終えた。
その巻末に、1947年から1961年にかけて公開された、新東宝映画の作品リストがずらりと並んでいた。
その数、おおよそ1,000本近くはあるだろうか。
リストは縦書きで、1本ごとに上から「タイトル名」、「原作者名」、「脚本家名」、「監督名」、「主な出演者名」が小さな字で並んでいる。
ふだんなら飛ばすところを、ひまだったので、「タイトル名」だけをざざざっと目を通してみた。
やっぱりというか、大蔵貢が社長になった1955年(昭和30年)以降の、劣情を刺激するタイトル名を眺めているだけでわくわくする。
以前日記に書いたことのある『九十九本目の生娘』だけでなく、『女護が島珍騒動』、『毒婦夜嵐お絹と天人お玉』、『童貞社員とよろめき夫人』、『裸女の花園』、『花嫁吸血魔』等々、ほんとうにそんな映画が存在するのかと、目を疑うようなタイトルが続々と登場する。
と、ここまでは“新東宝あるある話”。
珍妙なタイトル名に大笑いしながらリストを眺めていたら、突然1959年公開の『警察官と暴力団』というのに出くわした。
エロくはないが、あまりに身もふたもないタイトルだったので、誰が撮ったのかと監督名を確認したら、なんと市川崑だった。さらに脚本が新藤兼人だ。
自分で言うのも口幅ったいが、こと映画に関してだけは人並み以上に見聞しているつもりだが、市川崑に『警察官と暴力団』という作品があったとは、まったく知らなかった。
どうも釈然としない。ひょっとしたら印刷ミスではなかろうかとおもった。
ところが、『警察官と暴力団』の隣の隣に、『童貞社長と女秘書』という、さきにあげた『童貞社員とよろめき夫人』の姉妹編みたいなタイトルがあり、その監督が東宝の戦争映画でおなじみの松林宗恵、出演者名に上原謙と高峰秀子とあるではないか。ということは上原謙が童貞社長でお色気秘書が高峰秀子ということらしい。
次に登場した『婦人科医の秘密』という、いかにもおもわせぶりなタイトル作品には、上原謙と並んで今度は原節子が出演していた。
ますます、釈然としない。
さらには、『転落の十代娘』という、不純異性交遊とか桃色遊戯を連想するタイトルの監督が子ども映画の名匠・清水宏だった。
出演者名のトップに香川京子の名があるので彼女がヒロインをつとめ、転落するみたい。
1959年といえば、香川京子はすでに小津安二郎の『東京物語』(1953)や溝口健二の『近松物語』(1954)に出演し、さらには成瀬巳喜男や黒澤明の映画にも出ている。
そんな彼女がどうして十代の転落娘を演じたのか不思議でならなかった。
しかし、これだけ続くとぼんやりと事情が分かってくる。
結局、昔の映画に詳しい方のブログによると、新東宝は旧作を扇情的なタイトルに変えて、再公開していたということだった。
上映スケジュールの穴埋めだろうとおもうが、どんな事情があったのか私にはよく分からない。
ちなみに先に挙げた『警察官と暴力団』は『暁の追跡』(1950)、『童貞社長と女秘書』は『東京のえくぼ』(1952)、『婦人科医の秘密』は『女医の診察室』(1950)、『転落の十代娘』は『何故彼女等はそうなったか』(1956)だった。
あらためて、作品リストのタイトル名だけでなく監督名や出演者名を含めてながめると、1958年(昭和33年)あたりから、タイトル名と監督や出演者名が妙な取り合わせになっている作品が増えてくる。
私がざっと勘定しただけで、その数19本。
極めつけが1958年公開の『花ごよみ女一代』、出演者に田中絹代と三船敏郎、監督が溝口健二とくれば、誰が見ても『西鶴一代女』(1951)だ。
溝口健二は1956年に亡くなっているのでいたしかたないが、ヘンなタイトル名に変更しての公開に、文句を言う人はいなかったのだろうか。
まあ、いなかったんだろうな。



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