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2022年07月03日23:17

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映画日記『野性の少年』

2022年7月3日(日)

『野性の少年』(1970年)
監督:フランソワ・トリュフォー
伏見・ミリオン座

ときは18世紀末、フランスのアヴェロンという田舎で、丸裸で森林の中をガサゴソと這いずり回っていた少年が見つかった。
しゃべることもできず人間になつかない、野性の動物のような少年はパリの聾唖学校へ送られたものの、見世物同然の扱いしか受けられず、診断した権威ある医者の見立ては知的障害児だった。
その見立てに異をとなえたイタール博士は少年を自宅にひきとる。
博士は、少年の身の回りを世話するために雇ったゲラン夫人とともに、彼に教育を施していくのだが・・・・

未見のトリュフォー作品。ようやく見ることができた。
親から見放され、鑑別所暮らしを繰りかえしていたトリュフォー少年を、映画評論家のアンドレ・バザンが引き取って世話をしていたことは有名な話。
このトリュフォー監督自身の体験が『野性の少年』に多大な影響を与えているという、多くの人たちの指摘は、まったくその通りだとおもう。
誰が見ても、教育の必要性、とりわけ世間からは「出来が悪い」と烙印を押されてしまった子どもにも教育は必要であると説いた映画だ。
その教育には長い時間と根気、信頼と愛情、そしてお金と、面倒くさいことばかりがつきまとうことを、『野性の少年』はきちんと描いていた。
教育を効率で語ってはいけないのだ。

ついでに書くと、「出来が悪い」子どもをすくいあげ、助けることこそが、善き政治家の仕事であるとおもう。

モノクロ画面に、アイリスインとアイリスアウトのノスタルジックな心地良さ、ロングショットの美しさ、撮影がすばらしい。
少年が最初に発する言葉が、ヘレン・ケラーと同じ「水」かとおもったら、肩すかしをくったあげく、「牛乳」を示すカフェ・オ・レの「レ」だった。
牛乳とは、さすが農業大国フランスと、ちょっとだけクスっとなった。


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