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2020年04月01日22:11

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映画日記『名もなき生涯』

2020年4月1日(水)

『名もなき生涯』(2020年)
監督:テレンス・マリック
伏見・ミリオン座

オーストリアの山岳地で、妻と三人の幼い娘たちと、つましくも幸せに暮らす農夫のフランツが主人公。
オーストリアがナチス・ドイツに併合されたため、フランツは兵役につくが、すぐに除隊となった。
ところが、戦況の悪化にともない2度目の召集がかかる。
しかし、フランツは兵役を拒否した。

“この戦争は間違っている。ヒトラーに忠誠を誓うことはできない”

即刻収監されたフランツに、苦難の日々が始まった。
苦難は妻のファニにも襲いかかる。
祖国の裏切り者とののしられ、村八分になってしまったのだ。
結婚式に呼ばれることもなく、農繁期に手伝ってくれる村人は誰もいない。
娘たちにも苛めがはじまる。
少しだけ自分に嘘をついて、嘆願書に署名すれば、すぐにでも収容所を出ることができる。
お前ひとりが抵抗しても、世の中は何もかわらない。すこしは妻や娘の身の上も考えろ!
弁護士や神父たちの説得にも、フランツは信念を曲げることはなかった。
そして、軍事法廷が開かれ・・・・

テレンス・マリック版の『わが青春に悔いなし』だ。
フランツは藤田進で、妻のファニは原節子だ。
ただし、藤田進の信念を支えていたのは反ファシズムの自由主義であったが、フランツの場合は宗教だった。
ブルーノ・ガンツ扮する軍事法廷の判事が、フランツに対して「お前は、私を裁こうというのか?」と問いかける。
フランツの宗教的な信念に、軍服姿の判事の奥底に、わずかに残っていた良心がうずいた一瞬だ。

そう、不信心な私にとって、『名もなき生涯』は良心の映画だった。
3時間におよぶ上映時間中、フランツのような行動が取れるのだろうかと、ずっと考えながら見ていた。
何度もため息をついた。
強固な宗教心もなければ、確たる思想や主義・主張を持ってるわけでもない。
まあ、映画に出てくる村人たちと同じように、大勢に流されるのがおちだろう。
そんな、夢も希望もないような結論でいたら、ラストに小さな救いがあった。
それは、字幕で出てきたジョージ・エリオットという人のこんな言葉だった。

「歴史に残らないような行為が世の中の善を作っていく・・・・」

“歴史に残らないような行為”という言葉を、私は“良心”に置き換えた。
私にだって、良心のかけらぐらいはある・・・と、おもう。
兵役拒否みたいな大それたことでなく、毎日とはいわないが、年に2〜3度は出くわす自分の良心が試されるような局面に、逃げることなくきちんと向き合いなさい、と言われたみたいだった。
手前勝手な解釈だろうが、そんなことを感じて映画館をあとにした。


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