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2019年12月29日03:23

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映画日記 『ヨシワラ』 『男はつらいよ お帰り 寅さん』

10数年前、仕事で知りあった方と話をしていたとき、何かの拍子で映画の話題になった。
その当時、私は映画を年に50本ほど見ていた。
それでも普通の人より見てるはずだ。
そのことを話したら、その方が今は少なくなったが、ある年に「毎日、映画館で映画を見よう」と思い立ち、1年間で映画を365本見たという。
毎日1本ということではなく、3〜4本まとめて見る日もあったそうだが、会社の管理職として多忙な仕事の日々を送り、家庭を持つ身には、年に365本の映画を見ることは並大抵のことではなかったと語った。
たしかに、映画館で映画を年に365本も見るということが、どれだけ大変なことかは容易に想像がついた。
私には到底かなわぬ夢のような話だ。
いっぽうで、その日から、いつか私も映画館で映画を年に365本見てみたい、という気持ちが心の奥底に澱のようにたまっていった。
その後、映画を見る本数が100本、150本、200本と年々増え続け、昨年はとうとう300本を超え306本になった。
まあ、300本を超えたのだから御の字だと思うと同時に、365本はほんとうに遠い数字であることを再認識した。
そして、今年の11月末日のことだ。
エクセルで記録している映画館で見た映画リストを眺めていたら、308本になっていた。
この時点で昨年の306本を超えているではないか。
さらに、まだひと月残っている。
12月のひと月を、毎日映画を2本ずつ見続ければ、夢の365本に到達できる。
それから、狂ったように映画を見はじめた。
しまいには名古屋市内では、見たい映画がなくなってしまった。
そうはいっても本数稼ぎのために『アナ雪』みたいな、好きでもないアニメ映画に手を出したくはない。
幸いなことに、大阪で川島雄三の特集上映が始まった。
11月末で308本と書いたが、じつは『女王陛下のお気に入り』や『たちあがる女』のように、体調不良で寝てしまったために、2度見るはめになった映画が5本あった。
つまり、年に365本を見るということは、延べ370本を見なければならない。

12月27日に川島雄三特集の4本を見終えた時点で延べ368本、実質363本になっていた。
「映画館で映画を年に365本見る」までに、残すは2本だ。


2019年12月28日(土)

『ヨシワラ』(1936年)
監督:マックス・オフュルス
大阪梅田・シネ・リーブル梅田

フランスの名門映画会社・ゴーモンの歴史をたどる特集上映の1本。
ヨシワラはもちろん遊郭の吉原のこと。

ときは明治の初め、没落した一家の窮状を救うため、吉原に身を投じた娘・小花がヒロイン。
ゲイシャ・ガールの小花に、ロシア海軍の将校・ポレノフが惚れてしまう。
いっぽう、人力車の車夫・イサムは、かねてから小花に思いを寄せていた。
激動する時代の中で、小花とポレノフとイサムの三人に、苛烈な運命が襲いかかる・・・・

外国映画で『ヨシワラ』とくれば、誰だっていやな予感がする。
いわば特集上映の“珍品枠”の1本だ。
そして、予想にたがわず珍品だった。
珍奇な光景に苦笑するしかなかった。
車夫のイサムを演じていたのが早川雪洲だ。
早川雪洲は『戦場にかける橋』(1956年)でしか見たことがなかったので、珍品とはいえ貴重な機会だった。


これで、残すところ1本となった。
そして、記念すべき365本目は、これだ。

『男はつらいよ お帰り 寅さん』(2019年)
監督:山田洋次
大阪梅田・大阪ステーションシティシネマ

数日前から、365本目はこれと決めていた。
ラストの歴代マドンナが次々とあらわれるシーンに、あれは京マチ子、あれは八千草薫、あれは新珠三千代、あれは光本幸子、そしてあれは若尾文子と、登場する女優さんの名前をひとりひとり小さくつぶやいた。

この日、場内は大阪の市内だけでなく近郷近在から参集した爺さんと婆さんでほぼ満席。
誰もが寅さん映画を楽しんだ世代だ。
私もそんな爺さんのひとり。
映画が終わって、珍しく拍手が起きた。
私もその輪に加わった。
作品の出来うんぬんより、映画を見続けてきたことへのご褒美みたいな1本だった。


年間365本達成。
もちろん年間365本どころか、400本、500本と映画を見てる人は数多くいる。
他人と比較してもしかたがない。
365本は、私という平凡な男の夢だったのだ。


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