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日記一覧

猫と絶望 15
2015年10月30日07:45

 男の銃をまじまじと見つめる。質感は僕の銃と同じ、プリズムを一切発たないマットな透明。たが形状は違う。銃渥とボディは有るのだが、その先には銃口と呼べるものは無く、代わりに、帯状輪がある。勿論それも透明。 輪の直径はそう、さっき見た遺体の穴と

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ばななのよーなもの
2015年10月29日23:12

 「バナナ」は別にヤらしくはないが、「バナナのようなもの」はちょびっとヤらしい。 この流れで「マンゴー」というと変態扱いされてしまう。 文章とは奥が深い。「――のようなもの」という言い回し、つまりは比喩表現、もっといえば直喩は、修辞技法の野

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猫と絶望 14
2015年10月26日01:17

 逃げ惑う人たち、夕方、帰宅ラッシュの駅構から、濁流と化して流れ出てくる。泳ぐようとはいかないけれど、逆らって、僕、喧騒の中心に向かう。改札口、駅員や鉄道警察らしき制服群が円陣を張っている――きっと彼処だ。近づく。円陣の外縁に立ち、隙間から

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ハートの面積
2015年10月25日22:25

 紙にハートを書いてみた。 ――赤鉛筆でだ。じっと顔近づけ、上部に均等なる二つの膨らみ、それに対して下部に、きっちり三角形とは言いきれぬ尖り、を認め、長息し、天井を仰ぎ見る。「難しいことだ」 この図形、誰しもが知るこの図形――果たして、その

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盛られた歴史
2015年10月25日18:48

 ざっけない食堂。お盆にオカズを乗せていき、最後にご飯や汁物をオーダーし、精算をするsystem。 はらぺこりんちゃんの僕は、お盆いっぱいに宝石のようなオカズ達をのっけて、鼻息荒めでオバちゃんに告げる「ご飯、大盛り」「はい、お汁は?」「豚汁、大」

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猫と絶望 13
2015年10月25日16:47

 掴まれた襟、捻じり上げられ、薄手のジャンパー、ビニール、水色、ギギギと鳴る。片瀬、顔近づけ――「テメェ、マジ、ナメてんとコロすゾ」。僕は苦しい。つま先立ちにならざるをえない、ほど襟を掴まれている――片瀬、こいつは僕だけじゃなく、社会にとっ

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猫と絶望 12
2015年10月23日06:22

「待てナツ、猫の威信にかけて、これだけは言わせてくれ」 左眼に棲む猫が言った――「殺せと言った覚えはない」 「よく言う。いつも突然現れて”この男を殺さなければ、お前の命はない”って――」「そうだ。お前の言うとおりだ。私は必然的状況をお前に教

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猫と絶望 11
2015年10月21日22:29

 昨日人を殺した――と、いうのに僕は今日、普通に学校に行った。そうして授業を終え、アルバイトに向かう。いつもと変わらない日常、ルーチン。 自転車を停め、裏口から店内に入ろうとした。ら、声を掛けられた――海布山ナツ君。 聞き覚えぬ声にフルネー

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絶望と猫 10
2015年10月14日00:34

 黒田、駆け出す。篠原は、ズキズキと頭を抱え、「ちょっと置いてくな黒田。車出せ」「え?」「タクシーで来た。現場まで乗せてけ」「……はい」 黒田、篠原の人物はともかく、その能力には敬服をしている。が、心の何処か――いや、目視できてしまうほどの

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絶望と猫 9
2015年10月13日07:52

「5人目……か」 普段から青白い黒田の顔色が、更に青く白く、眉に寄った皺にはカード2、3枚ゆうに挟めそう。「5人目?」「あ……警部補……」黒田が警部補と呼んだ女性、警部補、篠原毬(まり)、だらしなくコートを肩にかけ、呼気には昼間から「アルコ

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一人歩きの背景色
2015年10月12日13:13

 キンモクセイのかおりが鮮烈きわまる。  ちょっとそこらを散歩すれば、すぐに香りにぶつかる。一体どこに花があるのか?見渡してもついぞ見つからない。しかし香ってくる。花ビラ一枚見あたらないのに、橙に寄った濃い黄色、眼前一面、レイヤーとなって

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絶望と猫 8
2015年10月11日10:06

 右ポケットに銃、透明な銃。僕にしか見えない銃。ポケットの膨らみが、実在と質量を証明している。手を突っ込み、触れる――ひょっとしてこれは、具現化されてしまった僕の殺意なのではないだろうか?難しい本を読んだ夜なんかには、そんなことを考えてしま

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絶望と猫 7
2015年10月09日23:42

「殺しの指令は、突然やってくる」 心安らぐ暇もない。こうしてネカフェのフラット席に寝そべって、ごろごろ漫画を読んでいる今この瞬間にも猫が現れて「隣の個室の男を殺せ。さもなくばお前の命はない」などと、理不尽不条な宣告を下すかもしれない。ところ

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絶望と猫 6
2015年10月08日02:21

 「死因……不明だと?」 眼鏡を指で押し上げ、眉間に皺を寄せ聞き返す男は刑事、黒田吾郎、場所は検死室。毬栗頭をボリボリと掻きながら、応える検視官、井戸田「不明だ。先週の高校教師と同じ、全くもって原因の分からない死に方をしている。そう、まるで

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さいきんのはなし
2015年10月05日23:34

Dear アンパンマン キミがこの手紙を読んでいる頃にはきっと僕はもう、この世から姿を消してしまっていることでしょう。今正に僕は、市、清掃局の精鋭部隊に追い詰められ、或る場所に逃げ込んでいます。銀色の防護服を纏った彼らは、きっと感情のない機械

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絶望と猫 5
2015年10月04日20:17

「新見さん……どうしてここに?」 自分にはまったくそんなつもりはなかったのだが、彼女には意地悪な口調に聞こえたらく「そんな言い方しなくても……心配だったから早退きさせてもらって来たの……」口をとがらせて僕の隣にしゃがむ。僕は空々しく、今度は

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絶望と猫 4
2015年10月03日06:08

  →選択肢1――ここに猫箱を置いてバイトに戻る。   選択肢2――保健所とかに持っていく。    選択肢3――バイト先に持ち帰る。 選択肢1は、楽な選択だ。 選択肢2は、結構面倒くさい。時間帯的にも役所が開いているとは思えないし。 選択肢

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