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日記一覧

 街灯の光域と闇の境目を狙い、竿を振るう。当たりはない。 学生の頃皆で行った夜釣り。飯盒でマカロニを炊いて、塩を振って食った。妙に旨かったなあれは。一人思い出す。 ルアーが闇に飲まれてゆく。 何だか魚ではなく、夜そのものを釣ろうとしているよ

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 ステータスを確認する。『俳人』 何度見返しても同じだ。吟遊詩人ではない。俳人。僕はこの世界で俳句を詠む職業らしい。 力:3 知力:4 体力:2 素早さ:2 運:5 何だか小学生の通知簿みたいだ。スキル欄を確認する。 俳句 [level1] 次のレベルまで7543

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かいぎ
2020年07月17日23:32

「僕は左手から三番目がいいと思います」 この中では最も若手なんだ僕は。先輩の発言の後では意見を言いづらい。だから先陣を切った。否定されるのは前提の上。よしんば共感を得られれば幸いぐらいのこと。「俺は二番目だと思う」 焼鳥屋の外装の絵コンテ。

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合法なる異邦人
2020年07月15日07:54

殺人の動機を尋ねられ一言「太陽が眩しかったから」カミュ著『異邦人』の一節まったく同じ動機で僕は君を愛しているのかも知れないベクトルが違うだけで強度は殺意に似ている

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 私は落ち込んでいた。学校に行きたくない、と母にゴネる。見かねた父がため息を吐く。そして両の手のひらをクの字に曲げて張り合わせ、中に空洞を作る。「この中に何を閉じ込めたと思う?」「何って?見てたけど何も入ってないじゃない」「朝の光がきらきら

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ジョンレノンを忘れる日
2020年07月01日09:58

 貴方の言葉が透明な刃となって私をぶった斬ろうとする瞬間、私は瞼を素早く閉じ言葉を挟み込むつもりだ。 真剣白刃取りの要領で、私を殺そうとした言葉を涙で押し返す。 肌の色が殺し合いの原因になるのなら、目を閉じて触れてみよう。「その暖かさに違い

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