レジでオーダーを告げると、氷の詰まった紙コップがトンとテーブルに置かれた。笑顔もなく金額を告げる口、誰とも会わない休日、唯一ともいえる人との触れ合いがこの仕打ちとは恐れ入る。いや、自分が間違っている。時給以上の働きを彼女に求めてはいけない
子供靴に頭を押さえつけられた百足、竹のナイフで脚を切り落とされていた。4、5人の子供が囲いをつくり、囃しながらそれを眺めている。子供たちが飽きることを期待していた。百足にはそれだけが未来だった。しかし子供は、大人よりも残忍で、そのうえ無限
行く当てのない散歩の果ては、大抵街灯のない暗がりに辿り着く。そうして見えない壁――羊羹のような夜の塊に阻まれ、引き返す羽目になる。今日もそうだった。土手を歩いていた。やはり街灯はなく僕は、そぞろ歩きの終焉を予感して、歩みをのろめた。ざっと
八月になりかけの朝、通り過ぐタイヤが路面を擦る乾いたシャー、幾重にも。そこに蝉がサンサンと和し、階段を降り切った僕の革靴が、一歩目を踏み出すべく逡巡している。 建物や電線、街路樹の作り出す陰が、アスファルトに静物のようにある。日差しはまだ
7月の太陽歩いているコンビニの帰路袋を断り無理して抱えるパンとコーヒーこんなに明るいでも街頭のない田舎道のよう視界は暗い新調した時計時を刻んでいるきっと正確なんだろうだけどもそれは僕の求めている流れではない「どうして微笑んだの?」呪い意識を
カタメメンスクナメアブラナシヤサイマシマシカラメマシニンニクスクナメフツウメンハンブンアブラマシヤサイチョモランマカラメニンニクナシフツウコイハンブンアコガレマシカイワナシナシアキラメキボウナシツラメコイカタオモイタメイキマシコドウマシマシ
捨て猫が歩いている防波堤の上青空を担いで小さな彼の心自分以外のすべてこの世界のすべて海に捨てた世界のすべてを捨てた猫防波堤の上捨て猫が歩いている彼はこれから何か大事な物を見つけては一つずつ拾っていこうと思っている
まさか外国人だとは知らなった。「友達も呼んでいいぞ」なんて軽々しく後輩に言ったが為に、望んでもない異文化交流をする羽目になった。「私の国ではこの煙草を回し飲みするのが有効の証デース」「二ホンはいい国ねぇ」「女の子キレイよ」「水道水が飲める
使い古した兜、余りに長い間被り続けてしまったせいで、もはやの兜が自分の本当の頭だという気がする。魚兜闘士の兜、魚を象った兜、その腹の中に、頭部を押し込む。世界が静かになる。視界が澄みやかになる――水中のように。俺は人間ではない。長い盾は堅
恋人たちが手を繋ぎ夜を蹴散らし歩く街私は独り空を見上げ薄らめた青が集い群れ群青になるのを呆然眺む寿司が降る雲一つ無い空から寿司が降る私の悲しみそのままに街を塗り潰してしまうほどに何度も画面を指で触れ貴方の文字を探したの千切れそうな耳を傾け鳴
皆、心配させてごめんね。あ、こんにゃちわー!猫に育てられた捨て猫系アイドル、ねこぴゃんだよ。挨拶の前にいきなり「ごめんね」から始まっちゃって――ごめんね。だって真っ先に皆に謝りたかったの。一か月も生配信しなかったから、皆を心配させちゃった
こんにちは、ボク精子、元気いっぱいの雄の生殖細胞さ。 そっか、良い子の皆は、僕の名前を呼ぶの恥ずかしいよね。特に女の子は。じゃあ僕のこと、せーし君って愛称で呼んでね。 僕の頭の中は、DNAでいっぱい。そして中片部、体の部分はミトコンドリアで
ボクはキミを食べるキミを食べるキミの弱いところを食べるキミの傷を食べるキミの悩みを食べるキミがまたもとのように笑えるまでボクはキミの痛みを食べるキミの悲しみを食べるキミの絶望を食べる食べる食べるキミを食べるキミの傷を食べるとボクは傷付くキミ
(彼奴を斃せば、自由の身になれる) 黒く光る肌、そして黒く長い髪、ガルムと呼ばれる男、遥か南の地で奴隷となり、物好きな貴族に買い取られ、奴隷として仕えることとなったその日に、貴族の娘を犯し、貴族を縊殺したという――それ以外、何も知られていない