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日記一覧

シュール俳句
2019年12月29日09:10

蒼天のバーゲン惑いてステンレス

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はじめての握手
2019年12月28日11:51

「思い出させてくれてありがとう」と僕が言った。「忘れさせてくれてありがとう」と君が言う。  同じく過ごした時の中で、心も体も取り返しがつかぬほど絡め合ってきたけど、それぞれ違うやり方で、過去の痛みに向き合っていたんだな。「忘れないよ」と僕が

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ときのこせしおもひ
2019年12月27日22:38

ひらりひらりまうひかりひらいうでもげてもおもうきみがかしこみのぞみはこだよりもひかりよりもはやくこのこころとこのところぼくのみにすべてくるしみたいよくるみたべたよあいしてるはあしるていとなりはてしこのせかいのはてはてきみがおもかげおいしわく

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麒麟檸檬
2019年12月27日21:48

 夏空、見上げれば眼が痛くなるほど青。どうにかして馴れようと眇めしている私、振り向くといきなり黄色い惑星。透明な水滴を幾粒も張り付かせ、宙に浮く未確認飛行物体。  私の耳に、「ほいっ」という声が届いた、映像よりだいぶラグって。 あの人の手か

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小野VS大野
2019年12月24日19:46

 放課後の教室、窓際、怒号が飛び交う。喧嘩?あの小野さんと大野さんが?いつも一緒に登下校する仲良しコンビのはずなのに?「大野さんには、わからないのよ。私の苦しみが」「落ち着いてよ小野さん、なんで怒ってるの?」「態度よ。態度!いつも私のこと馬

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博士とピアニスト
2019年12月18日08:55

「というわけで、僕は僕を殺したんだ」 博士に告げた口調、普段と変わらぬトーン、「朝ゴミを棄ててきた」と同じノリ。博士は眼鏡を外し、眉間を強く摘まんで。「ピアニストという人種は、決して人を殺さないものだと思っていたよ」 ため息を吐く。男は口角

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2019年12月11日13:24

 僕はカラス。綺羅綺羅した物が大好き。 綺羅綺羅したものを見ると、どうしても自分のものにしたくなる。また触れたくもなる。爪でつっついたり、嘴で啄んだり、綺羅綺羅したものを蹴ったり放り投げたりして、それが簡単には傷付かないことを確かめて、嬉し

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一直の線
2019年12月11日13:01

 青空に罫線が引かれている。 よく見ると飛行機雲だ。初冬の硬質な空に、文字通り連綿といった質感で伸びている。 幾文字も書けるようであり、一文字も収まらぬように見える。 指を伸ばせばきっと、想いを文字にすることはできる。しかし、青空に書き連ね

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 父を亡くして半年が過ぎた。 気持ちの整理が着いた頃、悲しみと入れ替わりに申し訳ないという感情が僕の心を占拠し始めた。恩を返したい、親孝行したいと考えてはいたが、多忙を言い訳に、「またいつか」、「何かの機会に」と先延ばすうちに、「いつか」を

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scene
2019年11月30日11:09

「真っ赤な嘘なんて言うけど、じゃあ真実は何色なんだろう?」 僕の問いかけに、彼女は緩慢に煙草を皿に押し付け、一点見つめの掠れ声で。「真実って何?」 僕は戸惑った。「真実は真実だよ」「そんなもの、このセカイにあるの?」 僕は口ごもる。「血と炎

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ため息は誰の為の息?
2019年11月29日19:52

 冬が嫌いだ。感情が目に見えてしまうから。 私は自分のため息を睨みつける。白く濁った小さな気体、これは紛れもなく私の肺が吐き出した憂いだ。まるですぐ壊れる雲のおもちゃ。感慨が輪郭を得る前に霧散して消える。夏は透明だった感情が、冬は白くなる。

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〈あれに噛み砕かれるのは御免だ〉 ジョーイは弾丸となって海面を目指す。 ジョーイの尾のすぐそこまで迫る巨大な唇。 鮪だ。どこまでも追跡してくる殺意。〈ヤツも必死だ〉 切れ目のない水の青さに戸惑うジョーイ。焦る。深度は?海面はまだか?1センチに

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 先日公開された映画、『子猫とひよこの物語』の作中に出てくるひよこのセリフに焦点を当て、作品を振り返るセリフ集です。 まだ映画をご覧になっていない方は、まずは映画をご覧になってから、お読みください。【序詞に変えて】飛べない空なんてないきっと

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テーブルの上の一秒
2019年11月23日11:19

 テーブルの上に一秒があった。 一秒が透明なままテーブルの上に滞空している。テーブルの向こうには彼女。僕と彼女の視線が無垢な一秒を宙で挟み込んでいる。 テーブルの上に、カップが二つあった。 カップには、北欧の暗海みたいなコーヒーが注がれてい

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銀河の彼方で迷惑した話
2019年11月20日10:52

(豆腐を取りたい) と、思ったが、台車が棚の前に置かれているため、ぎりぎり手が届かない。台車の上には、今から陳列されるであろう商品が山積み。台車の横には、白字に赤文字のユニフォーム、文字はドラッグストアの店名。シャツを着ているのは二十代くら

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記憶野に刺さった棘
2019年11月14日19:27

 毎朝車で通る道を何となく歩いていた。「こんな所に花屋さん?」漏らした独り言に呼び止められ、立ちつくす。 ビルとビルの僅かな間隙目掛け、エイヤと建築したような痩せたビルの一階、排気ガスでくすんだ軒を、帽子の鍔のように目深に被った小さな店。小

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異世界都々逸
2019年11月13日10:36

ネクタイ締めてたサラリーマンがここじゃあチートのヒーローよ

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目頭2時50分
2019年11月06日10:14

 孤独と涙腺が枕の上で殺し合いをしている。夜が孤独に加勢する。涙腺が後ずさる。 置き時計のデジタル光が明滅し、私の網膜を何度も何度も優しく殴打する。「私は自傷する」 あの人の為に。私の傷つく様を見て、あの人が笑うから。私の傷が深ければ深いほ

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「今何問目?」
2019年11月06日07:59

第三問(5点) タカシくんがハナコちゃんを想うときの感情の高ぶりを数値として示せ。(尚、2人はまだ手をつないだことがないものとする)「はい、じゃあね。中間試験前のミニテストの答え合わせね。やるね。第三問ね。まずは誰か前に出てきてもらって、自分

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人生はあと何行だろう?
2019年11月04日10:02

肌でも肉でもなく骨をぶつけ合うようなsex

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ノーサイド
2019年11月04日09:50

 『ラグビーは、試合終了後から始まる人間競技である』と、或る詩人が言ったか言わないか知らない。 『ノーサイド』という言葉に、武士道的潔さを感じるのは自分だけだろうか? 肉体と肉体を激しくぶつけ合えば、どうしても魂というものも肉体にくっついて

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クローバーの追憶
2019年11月03日22:38

 火葬場で焼き上がりを待つ親類の集まりから、焦れた子どもが一人、二人と脱落し、中庭に降りてゆく。無理もない。よく我慢した方だ。今日一日ずっと、幼い体に漲るエネルギーを抑えつけていたのだ。 大人たちは、子どもらを制止する気力も残っていないよう

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Chimera
2019年11月03日04:56

 今夜、僕は人間を辞める。アルコールに脳髄を沈め、確信犯的に人間性を消し去る。 雄になる。今夜こそ、性別欄の「男性」を二重傍線で消し込み、欄外に「オス」と明記する。今や僕は、がるがると君を求める一匹の獣。 君もメスになれ。獣になれ。肉欲に従

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spesius mimicry mimicry
2019年10月25日17:02

 僕の体はすべて僕のものだけど、僕の心は一部僕のものでない。 幸いにして僕は、不自由なく全身を動かすことができる。でも心はそうじゃない。自らの意志ではどうしようもない不自由な部分がある。 だから、楽しもうとしても楽しめなかったり、平静でいよ

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表現
2019年10月24日02:07

「おおーっと?!どうした?山村選手、突然ボールを抱えて走り出しました。解説の石橋さん、これは?」 「……ちょっと、状況が分かりませんが、山村選手のハンドということになりますね」 「ええ、あ、主審が今大きく笛を鳴らしました。……が山村選手、大き

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 Y氏の正体はスパイ。さまざまなミッションを成功させてきた凄腕のスパイだ。そして今、「独裁者Nを失脚させるようなスキャンダルを探れ、できうることなら暗殺せよ」という新たな指令を受け、S国に潜入している。表向きはG国の大使と身分を偽装して。 今夜

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イチャモンGO!
2019年10月22日08:53

 スーパーのレジで強そうなイチャモンを見つけた。「あんた店長?この店はいつまで客を待たせんのよ。茶髪の感じの悪い女店員、『お値段確認して参りまーす』って言ったっきり全然帰って来ないんだけど、もう20分以上待ってんのよ」 なかなかのイチャモン

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無銘の恋心
2019年10月20日23:36

剣を擬人化するのもいいが僕は貴女を擬物化したい貴女の白い肌はまるで刀身柔らかな温かみで男を真っ二つ誰もが望んで首を差し出す銘を思い付きました「葉書」というのはどうでしょう?何故ならば「切手(斬って)欲しくなるから」駄目ですか?では「iPhone」

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ズキズキの実
2019年10月20日11:43

僕が食べてしまった実その名は切実身を切るような激しい痛みと共に狂おしいほど暖かく貴女を想う能力実を食べることで手に入れた僕に敵う者などもはやこの世に存在しないいまや最強の力で貴女を想うことができるただその能力と引き換えに僕は貴女に溺れる体と

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薔薇薔薇殺人
2019年10月19日06:49

微笑みは花弁指先は棘癒されながら傷付けられる悦び(「喜び」でなく「悦び」で合っているはずだこの場合は)「うっ」漏れた呻きとともに躯が昇天し心は堕落した貴女は笑う薔薇のように貴女は触れる薔薇のように僕の耳元で囁く「私達きっと神様にも悪魔にも愛

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