手のひらを曲げて組み合わせる。丁度オニギリを握る格好だ。ただし、髪の毛一本通らぬほど、ぴっちりと隙間なく指を合わせる。そうすると120ccほどの密閉空間が出来上がる。 「何をしているんだい?」 「考えているの」 「何を?」 「この掌中の闇を、どうす
「おい!」猫を呼ぶ。家の近所の公園。とっぷり日は暮れ。冷えた街灯光が凝集して、ベンチに落ちている。 ベンチの上には、置いてけぼりの空きカン、カタカナの文字、色彩、浮き彫り、うかがい知ることのできぬ闇を湛えて、ちょこんと存在している。長息し
雨が病み空が腫れる天気は予防できない僕の心は移ろいやすく空色一つで憂鬱になる雨は闇蜘蛛が空を覆い尽くすメロディーソラのひとつ上は死ちっぽけで猫背な僕頭上の広大な景色に心を支配されるてしまうの 当然かもしれないけれどもねお天気なんてあの子の笑
僕らの熱 僕らの体温はまるで使い捨てカイロのそれ36度5分は半永久的ではなくって粗布の中の砂利のようにいつかはきっと 冷え切ってしまうそれまでに「君は誰を温める?」恋人を抱きしめ友人と手をつなぎ赤ん坊を背におぶって肌から肌へ熱伝う誰かの肌に触