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2026年09月17日17:21

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北北西に進路を取れ


☆『北北西に進路を取れ』(North by Northwest 1959;アルフレッド・ヒッチコック)

 *アメリカ大陸横断ウルトラアドヴェンチャー。ニューヨーク、シカゴ、インディアナ、サウスダコタと大陸を股にかけ主人公はアメリカの使命を賭け縦横無尽に奮闘する。出だしのソール・バスによるオープニングのデザインとバーナード・ハーマンの音楽がカッコよい(ハーマンの今ではよく言及される『サイコ』の音楽の祖形を感じさせる反復するミニマリズム・サウンドである)。

 *間違えられた男はヒッチコックの得意とするもの、当時のハリウッドらしくご都合主義のストーリー展開なのだろうけれど、テンポがよくそんなこと忘れさせる。

*マザコンから抜け出し本当の男になる、というものもヒッチコックでは多く描かれているように思う。

 *それにしても冒頭であんなに忙しい仕事人間である広告マンが、事件に巻き込まれているとはいえ、よくも社畜から離れやすやすとアドヴェンチャーを楽しめるものだと思ってしまう。あれもしなきゃ、あの人とも会わなきゃ、とビジネス約束事とか気にならないのかな、、でも殺人犯として逃亡だからそれどころではないのだろう。

 *ケーリー・グラントがカッコいい。1930年代40年代50年代に活躍したスター、ケーリー・グラントはケーリー・グラントであることに疲れたと言って一度は引退するも、ヒッチコックの強い説得を受け『泥棒貴族』で復活。私的には白髪も入った復帰後の本作品とか『シャレード』(註1)なんかのグラントの方が30年代40年代作品のときよりよい(30、40年代のハリウッド映画ってテンポがもったりしているから観てて眠りそうになるってのもあるけれど)。中年になってからのグラント、ユーモラスであり信頼もまた寄せられるアティテュード。ローレンス・オリヴィエが言う「映画が始まってすぐに、演出に頼らず、観客に『この人のようになりたい!』と思わせることが出来る唯一の俳優」は納得である。

 *エヴァ・マリー・セイントはエリック・カザンは『波止場』の街角庶民ガールとうってかわってソフィスティケーション・レディとなっての登場は驚きであるが(本作を先に観てるので、実は、『波止場』での彼女に驚いたのであるが。さすがカザンの愛弟子であるメソッド・アクター、化けぶりが凄い)。敵を演じるジェームズ・メイソンは主演作も多くありシェークスピアもこなせる演技派の名優。彼を敵役にキャストすることにより作品に重厚さが生まれる。

 *エヴァ・マリー・セイントが言う国民としての自覚。戦後まだ15年ぐらいの時代では国民意識がアメリカンは強かったのであろう。国のためになるのなら、という考え。時代が反映されているようにも思える。なんてったて大団円は歴代の大統領の顔が並ぶラシュモア山での展開、オーディエンスも国民意識を鼓舞されるだろう。でもヒッチコックって、プロパガンダ作品ではないけれど、国のために責務を全うするという作品が多いよね。彼自身のカメオ出演と同じぐらいこれってヒッチコックの特色のひとつなのかもしれない。

 *ヒッチコックはサスペンス映画の王様と言われるけれど、サスペンスとは吊るすという意味であるが、そこには引き延ばすも含意される。ひとつのシークエンスでなにかが起こりそうな気配の出来事を幾つかのショットに分けて置き、緊張を持続させ、オーディエンスはそれに惹き込まれる。例えば、有名な本作での農薬散布機の襲撃シーンでは、大きな通りが表され、その場所に来るべき人物が乗っているのではないか?という自動車が何台も通り過ぎていくなかサスペンスは持続される。ヒッチコックはキングである。アメリカにキングはいらないが、彼はイギリス人なのでそれは仕方がないことなのである。


註1 ヒッチコック作品に出たことのない当時のスター、オードリー・ヘップバーンが主演のヒッチコック風サスペンス。一説によれば、ヒッチコックはヘップバーンにオファーしたけれどレイプされる役だから、彼女は丁寧にお断りをしたとのこと。清純派スターのそうした作品は、ショッキング演出を図るヒッチコックらしい選択のようには思える。




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