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2023年04月14日22:31

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映画日記『聖地には蜘蛛が巣を張る』

2023年4月14日(金)

『聖地には蜘蛛が巣を張る』(2023年)
監督:アリ・アッバシ
伏見・ミリオン座

テレビではニューヨークの同時多発テロ事件のニュースが流れている。
その頃、イランの聖地マシュハドでは娼婦の連続殺人事件が続いていた。
事件を追って、テヘランからひとりの女性記者がやってくる。
彼女は、犯人が「街の浄化」を訴えるメッセージを送りつけている地元の記者の協力を得て、事件の真相に迫ろうとするのだが・・・・・

サイコなシリアル・キラーを主人公にしたスプラッター映画かとおもったら、まったく違っていた。
たしかに殺人シーンは凄惨だが、必要以上に過激な描写はない
殺人さえ起こさなければ犯人はいたって善良な市民。妻を愛し子煩悩な男だ。
そんな彼が、どうして娼婦連続殺人事件を起こしてしまったのか?
娼婦という存在が聖地を汚しているという宗教的な潔癖症。
堕落した娼婦たちという思い込みによる極度な嫌悪感。
娼婦のなかには、幼い娘を養うために、やむなく夜の街で立っている女もいるというのに。
映画の冒頭で、マシュハドにやって来た女性記者がホテルでチェックインしようとすると、男の同伴者がいなければ宿泊できないと断られるシーンが出てきた。
女がひとりで旅行するなんて、生意気だといわんばかりの女性を見下したフロントマンたちの姿がはっきりと描かれる。
犯人にもホテルのフロントマンたちと同様に男性優位主義や女性嫌悪が見え隠れする。
と同時に、かつてイラン・イラク戦争に従軍したにもかかわらず、不完全燃焼のまま戦場から帰還したといった意味合いのセリフを犯人がつぶやく。
街から娼婦たち一掃すること、それは犯人の男にとって、どうしても遂げなければならない「聖戦」だった。
こういう自分勝手な理屈で、はた迷惑なことをしでかすことを狂信的な行動という。
狂信は20数年前のイランだけでなく、いまも日本を含めて世界のあちこちで頻発している。
そして、その狂信者を生む根源が、宗教や偏狭な愛国主義といったものだけでなく、これからはチャットなんとかみたいな「AI」が加わってくるというのだから、ほんとうにたいへんな時代になったものだ。
ということで、途中から最近聞きかじったニュースをもとにした、どうでもいい世間話になってしまったが、映画は見ごたえがあった。
とりわけ、犯人の息子がニヤニヤしながら父親を英雄視したり、まだ幼い妹をおもちゃみたい踏んづけるシーンは、とても嫌な感じだ。




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