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2022年07月31日23:37

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映画日記『霧幻鉄道 只見線を300日撮る男』

2022年7月31日(日)

『霧幻鉄道 只見線を300日撮る男』(2022年)
監督:安孫子亘
東新町・名演小劇場

“霧幻鉄道”だけだったら台湾映画かとおもってしまう。
タイトルにある只見線は福島県の会津若松駅から新潟県の小出駅を結ぶJR東日本のローカル線。
只見川沿いの渓谷美や、紅葉目当ての観光客でにぎわうこともあるが、基本は赤字路線だ。
加えて、2011年7月の豪雨によって橋梁流失などの被害を受け、10年以上経った今も不通区間が残っている。
そんな只見線を中心に奥会津の風景を、あちこちと飛び回りながら撮り続けてきた地元写真家・星賢孝を追うドキュメンタリー。
一時は廃線の危機にあった只見線を救うため、星賢孝は自分が撮った絶景写真の数々をネットで世界に向けて発信する。
これだけならよくある地元起こしだが、このあとがすごい。
彼は撮るだけでなく、コロナ禍以前は観光客を率いて、只見線の絶景ポイントへと案内する撮り鉄ツアーを実施した。
撮り鉄ツアーは国内だけでなく、台湾を中心とした海外からの参加も多い。
そこで、台湾からの撮り鉄ツアー参加者が撮った鉄道写真のコンテストを実施し、その発表をかねた写真展を台湾で行うといったアイデアマンだ。
さらには、行政をも動かし、トンネルの出口という絶好の撮影ポイントを邪魔していた樹木をとりはらったり、沿線の柵の位置を移動させたりして、撮り鉄のポイントを40箇所も増やそうとしている。
その意気込みは、ある意味「狂的」ですらある。
ただ、本作の中に挿入される、水を張った鏡面のような田んぼの中や、錦秋や積雪といった四季の絶景の中を、とことこと生真面目に走る列車の映像や写真を見てると、この景観を守り後世に伝えたいという彼の気持ちは十分理解できる。
星賢孝だけでなく、「世界一只見線に乗った」と称される男性や、奥会津を色鉛筆で描きつづける女性に、旅館のオーナーなどが只見線を語る。
只見線とは、奥会津を愛する人びとの磁場だった。

情感をあおるようなナレーションが気になった。
また郷土愛だけで赤字路線を語っていいのかという人もいるとおもう。
ドキュメンタリー映画としては万全ではない。
それでも、鉄道好きの末端にいる者としては、愛さずにはいられない1本だった。
その只見線、今秋10月1日に全線開通となる。
雪の只見線に乗りたいものだ。


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