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2020年11月19日22:57

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映画日記『大頭脳』

2020年11月19日(木)

『大頭脳』(1969年)
監督:ジェラール・ウーリー
東新町・名演小劇場

先週から始まった「ジャン=ポール・ベルモンド傑作選」の中でいちばん見たかった1本。
じつは、中学生の頃に一度見ている。
といっても、デヴィッド・ニーヴンが首をカクンと曲げるたびに大笑いしたこと以外は、ほとんど覚えていない。ただし、とても愉快な映画だったという感触だけは残っていた。
それと、デヴィッド・ニーヴンが出てたこともあり、つい最近「ジャン=ポール・ベルモンド傑作選」のチラシを見るまで、『大頭脳』はイギリス映画だとばかりおもっていた。

ところはフランスのどこかにある刑務所。
しゃくれ顔の受刑囚・アルトゥール(ジャン=ポール・ベルモンド)は、相棒のアナトール(ブールヴィル)の手助けを得て、まんまと脱獄に成功した。
ところかわって、ロンドンのにぎやかな街角にある電気屋のテレビに人だかりができていた。
迷宮入りになりそうな列車強盗の犯人像を、捜査関係者が語っていた。
彼曰く、「強盗団の主犯は、大胆で緻密な計画を練るだけの優れた頭脳の持ち主である。その頭脳は人並み外れた大きさであり、なにか興奮するようなことがあると、脳の重さで首がまがってしまう・・・・」
テレビに釘付けになった群衆のなかにいた、口ひげを生やした英国紳士(デヴィッド・ニーヴン)が「あちゃー」という顔になったとたん、首がカクンと横に曲がってしまった。
口ひげの英国紳士こそが、警察や犯罪人たちから「ブレイン」と呼ばれる男だったのだ。
アルトゥールとアナトールのまぬけなふたり組とブレイン率いる強盗団、このふた組は同じ標的を狙った強奪を企んでいた。
その標的とは、NATO軍の軍資金。その金額たるや・・・・えーと、忘れてしまったが、とにかくものすごい大金なのだ。
そして、フランスのお間抜けコンビと、英国紳士の「ブレイン」一派による軍資金強奪合戦が始まる。
さらには、色目をつかうブレインから、妹の純潔を守ろうとするシシリアン・マフィアのボス(イーライ・ウォラック)が参戦し、話はしっちゃかめっちゃかになっていき・・・・

大笑いの大傑作。
二転三転するストーリーも面白いが、なによりもドタバタ喜劇の面白さに満ちている。
デヴィッド・ニーヴンが閉じ込められた旅行用の大型トランクが坂をころがっていったり、ベルモンドが乗った車が前後に寸断されても前輪だけで走り続けたりと、登場人物たちがドタバタと動き回る。
嫌味で、いわば悪役にあたるイーライ・ウォラックのマフィアのボスに、とんまな手下がくっついているというも定番だ。
最近、本作のような動きで笑わせるコメディがとんと少なくなったような気がする。
日本でもリメイクされることになった、イタリア映画の『おとなの事情』(2016年)がいちばん良い例だが、7〜8人の登場人物に、小道具として人数分のスマホを用意するだけでコメディが一丁あがりだ。
一丁あがりといっても、シチュエーションの設定と、セリフで楽しませる映画ということで、それなりに難しいとはおもうが、それよりも動き(=映像)で笑いをとるドタバタ喜劇の方がよっぽど難しいと、しろうとの私でも想像がつく。

中学生時代には分からなかった、『大頭脳』はとんでもない大作だった。
英・仏・伊とヨーロッパの名優たちをそろえ、クライマックスのモブシーンが、まるでロケ地になる港町の住民全員が集まったようなものすごい人数だった。

10代の頃に大笑いした映画を、半世紀後にふたたび見て、やはり大笑いしてしまった。
そんな自分がとても果報者におもえた。


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