『果しなき欲望』
『盗まれた欲情』の長門裕之にもっとも表されるイノセントにナイーヴな存在はイマヘイのテクストにおいていつの間にか姿をフェイドインしていたのかと思っていたのだけれど、この作品を観るとその姿はずっと在り続けているのだと認識する。すなわち、長門演じるボンボンに表されるイノセントにナイーヴなものは『うなぎ』の役所広司にも『復讐するは我にあり』の緒形拳にも、そしてイマヘイがネズミとの情事を嗾ける『人間蒸発』の露口茂にもあるのだ、と、そして男だけではなく、イマヘイの描く女性たちの根底にあるものにもある、と気付かせられる。きっと、この作品での長門は筋とはあまり関係ないところに道化回し的にいるから認識させてくれたんだろうな、となる。でも、オンナたちにもあると言ってしまうのは、ちょっと極論かな。でも、不思議な生き物に女性をとらえる視点の中にはイマヘイ、そうしたものが、例えば『赤い殺意』の春川ますみにはあるのではないか、とも思える。
Bムーヴィーの定番筋立ての男女たちの騙し合いの果ての奈落の底は、様々な職業の違ったシェーマを持つ人々が行う、というよりは、イマヘイがいつも表すような戦後の闇市から都市空間へと変貌するなか、そのプロット、ラーメン屋、薬屋、教師、ヤクザ、オンナ、と、長屋街という玉突き台の上で、どこにでもいる人物たちが欲望のビリヤードを掛け合う感じで、よりノンフィクションなタッチ、或いは、個の内面性を表すようになっても在り続けるイマヘイの定番アイテムなんだ、とも気付かせられる。客観性から後には主観性的なものへと研ぎ澄まされていくのでは、彼の撮るというメソッドのなか、在るのではあるが。
ログインしてコメントを確認・投稿する