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2019年10月02日00:42

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総論22「高天神城の後巻」合戦考証82

○天正九年「羽柴秀吉の鳥取城攻め」は、六月二十五日に出陣して、十月二十五日の落城。約四ヵ月に及ぶ「干し殺し」で、城が落ちたわけです。

●『信長公記』巻十四
「城中より降参の申し様、吉川式部少輔、森下道祐、日本介三大将の頸を取進すべく候間、残党扶け出され候様にと侘言申候。此旨、信長公へ伺ひ申さるる処、御別儀なきの間、則、羽柴筑前守秀吉同心の旨、城内へ返事候の処、時日を移さず腹をきらせ、三大将の頸持ち来り候」

○城将の吉川経家ら「三大将」が、自分たちの自害と引き換えに、籠城する者たちの命乞いをして、「降参を許された」という結果です。通説では「鳥取のかつえ殺し」と言われていまして、「秀吉は、鳥取城に兵糧が集まらないように計略を仕掛けて、敵を飢えさせることによって、城を落としたのだ」という話ですよね。しかも『信長公記』でさえ「敵方に餓死者が続出した」と書いていますが、どうして「餓死するまで、おとなしく籠城している」と考えるんでしょう?

●『信長公記』巻十四
「三月廿五日亥剋、遠江国高天神城の者過半餓死に及び、残党こぼれ落ち、柵木を引破り罷出で候を、爰かしこにて相戦ひ、家康公御人数として討捕る頸の注文」

○同じく天正九年で、こちらは「徳川家康の高天神城攻め」です。実を言いますと、天正年間の「信長の合戦」は作品化したことがありませんし、天正四年以降の内容だと「作品化の予定もなかった」がために、細部までは調べてないんですよね。ましてや「信長が出陣してない合戦」ですと、大した史料も持ってないんです。よって「秀吉の鳥取城攻め」も「家康の高天神城攻め」も、詳細は知らないと言わざるをえないのですが、ここでも「籠城の者、過半、餓死に及び」の記述があります。前年の内から家康が「高天神城に干し殺しをかけていた」わけですが、正確に「いつ始まったか」は確認してないものの、少なくとも四ヵ月は過ぎているはずで、その点も「鳥取」と同じだし、そして「大量の餓死者」も同じ。

○違うのは、こちらの場合「残党がこぼれ落ちて、柵木を引き破って出てきたので、そこかしこで戦いになった」という「終わり方」ですね。この文章のあとに続いて、徳川軍のそれぞれが「いくつの首を取ったのか」を、ズラズラと書き連ねているんです。つまり高天神城は「降参せずに、城から出て、戦うことを選んで」ほぼ全滅。じゃあどうして鳥取城は「戦いもしないで降参した」んでしょうか?「餓死者が余りに多すぎて、戦うことができなかった」と思うんですかね?

○合戦研究をする歴史学者が、『信長公記』をまったく読んでないとは言いませんけども、このように「言葉でもって「餓死者が出た」と書いてあること」だけしか「根拠」にならないんですよね。よく考えてくださいな?「鳥取城は、大半が餓死するほど弱ってしまったので、戦えないから降参した」と解釈して、一方の「高天神城は、半数ほどが餓死したので、まだ戦える者たちが討って出た」と解釈するならば、どうして鳥取城は「半数ぐらいの段階で、高天神城みたいに戦わなかったの?」という疑問を覚えませんか?「その疑問」が出れば、当然「次の疑問」に気づきませんか?「どうせ戦うんだったら、どうして高天神城は、餓死者が出るより前に、兵糧が不安になってきたころに、戦わなかったの?」って。

○「書いてあること」だけが絶対理解で、それ以外を「考えない」のが歴史学であるというなら、じゃあ「書いてあること」で言いましょう。上記の文章の続き。

●『信長公記』巻十四
「武田四郎御武篇に恐れ、眼前に甲斐、信濃、駿河三ヶ国にて歴々の者上下其数を知らず、高天神にて干殺にさせ、後巻を仕らず、天下の面目を失ひ候」

○「武田四郎勝頼が、信長公の御武辺を恐れて、甲信駿の三国に知られた歴々の者たちを、高天神で無数に干し殺しにさせてしまい、後巻(うしろまき)をつかまつらず、天下に面目を失った」と書いてあります。中で重要なのが「後巻」の言葉です。鳥取攻めの場合、八月に「芸州より毛利、吉川、小早川、後巻として罷出づべきの風説」とありましたよね。そして小谷攻めでも「朝倉孫三郎後巻として八千ばかりにて罷立ち」とあったじゃないですか。要するに「後巻」って、何?

○小谷城の支援に来る朝倉軍。鳥取城の支援に来る毛利軍。高天神城の支援に来る武田軍。つまりは「干し殺しをかけられている味方の城を、救援するために出てくる支援軍」を意味する言葉、および「支援軍の救援行動」の意味で読むべきでしょう?「後巻をするはずの武田四郎が後巻をしなかった」と牛一は書いているのですから、「支援に出てくる予定の武田軍が来なかった」の意味でしょう?
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