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2018年05月15日23:59

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映画日記 『孤狼の血』 『愛染かつら』 『痴人の愛』

2018年5月13日(日)

『愛染かつら』(1954年)
木村恵吾:監督
東新町・名演小劇場

京マチ子がヒロインの高石かつ枝に扮し、鶴田浩二が相手役の津村浩三を演じていた。
肉食系女子の元祖みたいな京マチ子に、高石かつ枝のような耐える女性という役は似合わなかった。
もうひとつ、京マチ子の歌声が聴けるかもと楽しみにしてたが、残念なことに吹き替だった。


『痴人の愛』(1967年)
増村保造:監督
東新町・名演小劇場

京マチ子版、叶順子版に続いて、安田道代版の『痴人の愛』を見ることが出来た。
3作を見た結論としては叶順子版がいちばん好きだ。

以上「大映女優祭」の2本を見てから、この日の本命作を見に行った。


『孤狼の血』(2018年)
白石和彌:監督
名駅・ミッドランドスクエアシネマ

傑作!!

携帯電話ではなくポケベルが全盛だった昭和末期、広島近郊の架空の都市・呉原が舞台だ。
呉原のしみったれた街金の社員が失踪した。
呉原署のマル暴刑事・大上(役所広司)はこの裏にはヤクザが絡んでいるとにらんでいた。
大上は広島県警内でも一目置かれる存在ながら、違法捜査と地元のヤクザと癒着が噂される悪徳刑事だった。
そんな大上のもとに広島大学出身の、いわばエリート候補生である新人刑事・日岡(松坂桃李)が配属される。
大上とともに日岡は失踪事件を追っていく。
そこで日岡が見たのは、

「警察じゃけえ、何をしてもええんじゃ!」

と、うそぶきながら暴力と脅しの違法捜査をし、ヤクザから賄賂を貰うという、大上の噂通りの悪徳ぶりだった。

単なる街金社員の失踪事件が、やがて呉原を二分する地元ヤクザの尾谷組と、広島を根城とする巨大組織・五十子(いらこ)会系・加古村組との緊張関係を高めることになっていく。
やがて、その緊張関係は破綻し、抗争が始まってしまう。
失踪事件の真相は如何に?
尾谷組と加古村組の抗争の行方は?
そして、抗争に巻き込まれてしまった大上と日岡の運命は・・・・?

先月、原作本を読み終えていた。
事前に原作を読むことが良いこと悪いことかよく分からない。
こと『孤狼の血』に関しては、原作を読んでおいたおかげで余計に楽しむことができた。
それは、おおすじは原作と同じだが、こまかいところで「そう来たか!」と、にんまりするシーンがめじろ押しだったからだ。
ヤクザ映画ではあるが、ミステリー映画でもあるので詳細は書けない。
問題がなさそうな範囲で書くと、真木よう子扮するナイトクラブのママは、原作では小料理屋の女将だった。
設定を変えることによって、ナイトクラブが敵対するヤクザたちがにらみ合う最前線になった。ナイトクラブでの出来事がきっかけで、抗争がはじまる。
そういえば、爆笑シーンの“真珠採り”も、ナイトクラブでの余計なひと言が原因だ。
原作では墨塗になった警察の業務日誌が各章の前に登場する。
映画でも墨塗の業務日誌が出てくるが、墨塗の意味が違っていた。
原作本のあとがき解説で、『孤狼の血』は原作者の柚月裕子が深作欣二監督の『仁義なき戦い』シリーズや『県警対組織暴力』に触発されて書いたとある。
養豚場のアンチャンが大上から取調室でボコボコにされるシーンは『県警対組織暴力』で川谷拓三と菅原文太による名場面の再現だ。

そういえば役所広司扮する暴走刑事(でか)の名前、大上=“おおがみ”はタイトルにある“狼”に掛けているだけでなく、『仁義なき戦い 広島死闘編』に登場する千葉真一扮するむちゃくちゃなヤクザ・大友に由来しているような気がした。
とすると、松坂桃李扮する日岡=“ひおか”は田岡だろうか。
ということで、原作本を読んでいたおかげで、いろいろ独り合点することが多い。

さらに、“真珠採り”のような原作にはない映画のオリジナルには恐れ入る。
とりわけ、ラストの「お●こ」には見事に1本取られた。

白石監督の、『凶悪』や『日本でいちばん悪い奴ら』やロマン・ポルノの『牝猫たちの夜』といった下品で暴力的なアウトロー映画の集大成にしてひとつの到達点が『孤狼の血』だった。
到達点であっても、あくまでも通過点だ。
次回作に期待する。



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