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2026年09月09日15:39

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ブルーベルベット


☆『ブルーベルベット』(Blue Velvet 1986; デイヴィッド・リンチ) 

 *「イレイザーヘッド」でアンダーグランド映画のヒーローとなり、メル・ブルックスから声を掛けられ「エレファントマン」、でいきなりオスカーの作品賞候補になったり、と脚光を浴びるリンチであるが、 ディノ・デ・ラウレンティスに声かけられ「デューン/砂の惑星」やるも大コケ、もはやリンチの映画生命も終わったかのように見えるも、リンチは「ブルーベルベット」をやりたいと図々しくもデ・ラウレンティスに駄々をこね申し入れ、断れると思いきやデューンの半額の製作費ならとゴーサイン、すると本作品は大ヒット、起死回生となる。その後、『ワイルド・アット・ハート』はカンヌでパルムドールを受賞し、同時期にテレビで『ツインピークス』が大ブーム、とこの頃ナインティーズはリンチの好調期。そんな勢いを感じさせるものが『ブルーベルベット』のフランク・ブースの運転するダッジ・チャージャーのブロロン・サウンドに表される。『デス・プルーフ』と同じように、こちらでもダッジ・チャージャーは大活躍。

 *リンチ自身は穏やかなスモールタウンに轟くダッジ・チャージャーのブロロンは時代の変化に対する恐怖と語っているが、怖がりがゆえにリンチ、けっこう恐怖を描けるのかもしれない。フィラデルフィアで、歩いていると、ピストル発砲で撃たれる人を見たり、本作品終盤に出てくるようなスッポンポンの傷ついた女性を道路で遭遇したり(どうやってその女性がそこにたどり着いたのかが不思議であるが)したそうであるが、そうしたトラウマがリンチの暗黒映像を作り上げているのかもしれない。

 *本作品は凶悪なギャング、ファム・ファタール、悪徳警官を意識的に言及、そうフィルム・ノワールへのオマージュだ。そしてそうしたイメージを用いながら、現実かフィクションなのか、の混乱を招く。この作品のあとのリンチのテクストにおいてその度合いは強まっていく。

 *『パルプ・フィクション』は低迷していたブルース・ウィリスとトラボルタの復活作だと言われるが、本作品もまた「イージー・ライダー」と「ラストムービー」で異彩放ったデニス・ホッパーの復活作だと言われている。彼が演じるフランク・ブースは映画史上屈指のノトリアスなワルなのである。

 *何度も本作品は観ているが、今回は会話をするジェフリーとサンディの目線や反応して起こす所作を見ていきながら、互いが惹かれるモメントに関心を寄せる。すると、これまで以上に感動が起こる。

 *ヒトはミステリー好きだけれど、若人は少年探偵団のように危険を顧みず、というよりミステリーに魅了されるのだろう、自ら危険なゾーンに入っていく。逆光になって2階から降りてくるジェフリーのショットにそれは暗示される。事件の発端にして手掛かりとなる耳に導かれながらジェフリーはミステリアスな出来事に入っていくけれど、彼が対峙する女性たち、それも彼にとってのミステリーなのであろう。本作品もまた『デス・プルーフ』と同じように、バタイユ的恍惚としての、死に重なるかのようなエクスタシーが表される。ジェフリーにも、愛の悲痛を受けるサンディ、そして痛い痛いが好きでぶってよぶってよぶってぶってとのたまうドロシーにも。

 *アブジェクションであるレイディーズ、血を表すドロシーに、涙を表すサンディ。愛がない世界はリンチが常に表すテーマ。それに一見静かで穏やかなスモールタウンに潜む一筋の闇。これもまたリンチ印である。ジェフリーは光(サンディ)と闇(ドロシー)を愛す。人間の性(サガ)か。罪の文化を表す西洋らしさであるが、大学生は人妻に夢中になり、気付いていなかった本能に目覚める。しかしそれは野獣の本能。彼は自身の闇を消し去るかのようにクローゼットのなかフランク・ブースに対峙する。

 *本作品は架空のスモールタウン、ランバートンが舞台。どこで撮影されたのか調べると、ノースカロライナ州ウィルミントンにあるスタジオで撮影され、ロケ撮影もまたそこで撮影されたとのこと。ロサンゼルスとほぼほぼ関係ない地方都市。でも大都市とは違った、アメリカにある街の雰囲気を活き活きと伝えてくれるような、行ってみたい街である。

 *本作品、その後のリンチ印である、愛のない世界、アイデンティティの分極、そして甘美なる官能が、フィルムノワールをオマージュする物語映画であるがゆえ分かりやすく表されている(その後のリンチのテクストに比すれば分かりやすいであろう)。





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