2024年1月22日(月)
『千年女優』(2002年)
監督:今敏
矢場町・センチュリーシネマ
原節子や高峰秀子のように、戦前から戦後にかけて、昭和の大女優とうたわれた藤原千代子だったが、今は人目に触れることなく静かな余生を送っていた。
そんな彼女の前に、小さな鍵を手にし、ビデオのカメラマンを引き連れた中年男があらわれる。
その中年男、いまは小さな映像制作会社の社長におさまっているが、千代子の昔からの大ファンだったこともあり、彼女のドキュメンタリーを撮ろうとしてた。
男が持参した小さな鍵が誘い水となり、千代子は少女時代から始まる半生を語り出す。
すると、千代子が語る半生と彼女が出演した映画とが溶けて混じり合い、戦国時代から未来の宇宙までの、千年の時空を超えた恋と映画と冒険の物語となっていく・・・・
ふだんアニメは見ないのだが、どういうわけか、今敏監督の作品だけは引かれてしまう。
若くして亡くなった今敏は、監督として4本のアニメ映画を残している。
未見だった最後の1本の『千年女優』をようやくつかまえることが出来た。
現実と映画とが入れ子になる語り口が見事。
戦前や戦後まもない頃の、撮影所や街角をレトロチックに再現した、こだわりも見事。
そして、ラストでヒロインの千代子が言う、
愛するものを追いかけているときが、いちばん自分自身が輝いているときで、いちばん幸せなときなのよ!!
といった意味あいのセリフにグッときた。
よく映画監督が「あなたの代表作は?」と問われると、「それは次回作」と答えるという小咄がある。
そんな小咄やヒロイン千代子の発したセリフにならえば、「明日見ようとおもっている1本の映画こそが、私にとって生涯忘れられない映画だ」ということになる。
そんなふうに手前勝手に解釈すると、日頃のうっぷんや鬱屈を忘れ、俺ってなんて幸せな男なんだろうと、一瞬だけおもった。
ところで、本作には戦国時代から宇宙までが登場する。
これって、橋本忍の『幻の湖』(1982)と同じだなあ、とおもった。
まあ、関係はないとおもうが。
ログインしてコメントを確認・投稿する