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日記一覧

迷子の言い訳(その8)
2014年12月31日13:36

 目的地というものは、どの程度に重要なものなのだろうか。もし、何か食べようとしてパン屋に行く途中に団子屋を見つけて団子を買って食べることは、はたして、人として、どの程度ダメなことなのだろうか。そもそも、筆者には分からないのだ。同じ道を何度も

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課題小説
2014年12月30日14:12

 男は公園の中央にあるブランコの端の物を選んで、そこに腰を降ろした。ブランコの鎖が手袋をした手に対しても十分に冷たいだろうことを考えてか、男はそれを手で持つことのないまま、慎重に腰を降ろした。椅子の部分の木は、まるで氷のように冷たく、その冷

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迷子の言い訳(その7)
2014年12月29日14:28

 間違っているはずがない、と、その根拠はどこにあるのか。考えてほしい。もし、あなたがルーレットの赤に駆け続け、何十回も連続で負けていたとしたら、次に来るのは黒だと思うのではないだろうか。迷子になるタイプというのは、まさに、そうした事態にある

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課題小説
2014年12月27日03:09

 船の形をした石の滑り台の中に隠れて彼は途方に暮れていた。石の滑り台の中は空洞で、側面には丸い穴が開けられている。おそらく船窓のつもりなのだろう。そこから覗くと、公園の向こうの小道が見える。小道は街灯に照らされて白く光っている。車の通る気配

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課題小説
2014年12月26日12:55

 男はふらつく身体を石で出来た丸椅子に尻を置くことで支えようとしていた。そして、尻に伝わるあまりに冷たい感触に驚いて再び立ち上がり、今度は前のめりとなり、同じ高さの星型の石の椅子に手をかけ、再び、その冷たさに驚いた。 左右に身体を揺らしなが

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迷子の言い訳(その6)
2014年12月25日03:41

 あなたが、もし、いつも正確に目的に着くことの出来るタイプだとすれば、あなたは、かなり損をしていることになる。それは人生の楽しみは寄り道であり、道草であり、袋小路だからなのだ。人生においてつまらないのは近道であり、大通りなのだ。 筆者は、と

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迷子の言い訳(その5)
2014年12月24日04:15

 迷子になるような人間は記憶力に問題がると思われるかもしれないが、それは間違いだ。筆者はかなり記憶力に自信があった。もちろん、こうした年齢になれば、その能力は衰えてはいるだろうが、それでも、まだまだ自信がある。子供の頃には自分の家族の名前と

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迷子の言い訳(その4)
2014年12月23日03:32

 道の選択に躊躇がない。しばしば、筆者と同行した人は、筆者があまりにも自信に満ちたまま誤った道を行くので、自分こそが道を勘違いしていると考えて、筆者について来て酷い目に遇ったりする。 どうして迷子になりやすいと知っているのに道を選ぶことに躊

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迷子の言い訳(その3)
2014年12月22日01:52

 道には迷うが頭がいい人もいる。そんなことを信じる人は愚かである。道に迷うぐらいだから頭も悪いに決まっている。そのことは筆者が証明している。迷子になる筆者の頭が悪いのだから、迷子になるような人は皆、頭が悪いに決まっている。臨床例などひとつあ

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迷子の言い訳(その2)
2014年12月21日13:03

 迷子になると分かっていて、筆者はルポを生業としていた。おかしなものである。たとえば風俗取材でさえ、今ほど便利ではなかったというのに……。筆者が主に取材していたのはマニア風俗なのだから、駅から歩いて二十分なら近いものだった。駅から三十分。タ

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迷子の言い訳(その1)
2014年12月20日13:56

 こうしたことを書きはじめるということは、つまり、書けないときなのだ。書けないものだから、どこにでもある日常の話でごまかそうとしているのである。書けないときに書かないのはよくない。アスリートはケガをしても、ケガに影響のない部位を鍛え続けると

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次回書き方講座課題
2014年12月19日13:52

 次回の書き方講座のテーマは三人称とカメラワークです。 そして、課題であるところの状況設定小説の、条件は、以下のものになります。 おかしな公園だった。周囲は花壇に覆われているとは言うものの、その向こうには普通の街があるのだ、それなのにもかか

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 景気が少しばかり回復していたことと、クリスマスが日曜日と重なっていたことが影響してか、街は例年よりも賑やかだった。街が賑やかな分、人里離れた場所は静かだった。それが、数年後にはダムの底に沈む村だとすれば、なおさらである。そんな村の、とっく

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 筆者にも若い頃があり、幼い頃があった。おそらく、あったのだろうと思われる。そんな頃、筆者はマニア雑誌にかかわった。最初は投稿者だった。そして、編集者となった。しかし、その頃は、まだまだ若かった。 ゆえに、その頃の事は、記憶が定かでないばか

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 見栄を張ること、格好つけること、気取ること、そうしたことは、いつ頃から嫌われるようになったのだろうか。筆者にとってアブノーマルとは、そうした日常の緊張からの解放でしかなかった。つまり、自らの内側にあって隠している本性を解放していい時間であ

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 曇天の朝、筆者はパソコンの前で目を覚ました。隣の炬燵には、ライトテーブルの電気を付けたままで寝ている友人がいた。金になるかどうかも分からない本を寝ずに作っていたのだ。筆者はインタスタントの不味いコーヒーをポットのやや温くなったお湯で作って

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 こんな年齢になっても、着飾った女を見るというのは面倒なものだ。どれほど着飾ったところで、どうせ見たいのは、その下のさらに下にあるものなのだ。それなら、いっそ全裸でいてくれたほうがありがたいというものだ。 その昔は性風俗も面倒なものだった。

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 最近は、すっかり、昔ながらのいわゆる喫茶店というものを利用しなくなった。コーヒーは飲むときには喫茶店というよりはコーヒーチェーンのようなところで飲むことが増えたからだ。安い上に、たいていは広いので長居に気兼ねがないのだ。 しかし、ときどき

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 オカルトとエロは相性がいいはずなのに、この二つは、なかなか共存出来ないのだ。エロはオカルトほど真面目になれないし、オカルトはエロのように不真面目にはなれないからだ。 また、オカルトがエロにあまりに近づくと、怒る人たちがいるのだ。それを真に

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 いつまで夢を見ているつもりだ、と、そう言われたら死ぬまでです、と、そう答えるしかない。誰れが本気でこの世を生きようと言うのか、筆者には、この世を本気で生きていることのほうが夢物語のように思えて仕方ないのだ。 うわついて、ふらふら生きている

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 そういえば、アダルト映像を観なくなってどれぐらいになるのだろうか。観ようと努力したことはあるのだ。何しろ筆者は努力家なので、そのぐらいの努力はしているのだ。ところが、飽きてしまうのだ。以前なら、自分の性癖には全く関係のないところのセックス

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 人間というものは老いてくれば愚痴っぽくなるものだ。もともと卑屈だった筆者にすればなおさらである。エッセイは嫌いではないが、書かなかったのは、エッセイを書けば愚痴になるからだった。早起きして損した。朝食が不味かった。落としていないお金が見つ

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 夏休みの宿題が完璧に仕上がっていると確認する八月の末日に、いくつかの教科で、宿題があったことを忘れていたと気付くことがあった。全て終わったと思ったところで、必ずといっていいほど、ひとつふたつのこぼれがあるのだ。この癖は大人になってからも治

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課題小説
2014年12月06日11:47

 折り紙の端がどうしても少しずれてしまうように、友達との会話がほんの少し噛み合わないように、セックスの快感が男との間で微妙にずれるように、私の人生はいつも何から少しだけずれていた。 小学校のとき、折り紙が上手に出来なかった。皆はきちんと折れ

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課題小説
2014年12月03日13:07

 海水を温めただけのものを味噌汁と騙されて飲まされたような気分になり、食道が塞がり、まだ、飲み込んだ物は胃に届いていないというのに、すでに胃は異物を感知して、それを吐き出そうとしている。それにもかかわらず、ドブのような汚い海の温かい海水は口

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課題小説
2014年12月01日05:07

『女を呑み込んだ川と男を呑み込んだ母』という題名で修士論文を書いていた。川と民間伝承というのがテーマだった。ボクはこの論文を書くために大学に入ったのだった。そして、この論文を書くために大学に残ったのだった。 今、ボクは山梨の河原で無意味に釣

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課題小説
2014年11月29日02:14

 全裸の女二人を獣のように歩かせる。その首には大型犬の首輪、そして、その首輪を繋ぐリードを私が持つ。全裸の女は洋服を着た男や女とすれ違う度に、互いに工夫して裸を隠そうとする。しかし、両手両足を床につけて歩かされているかぎり、女として、もっと

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課題小説
2014年11月28日02:33

「結婚しようって、何それ、何の冗談。私と貴方が結婚するの。それ、本気で言ってるの。ここは風俗店で、私は女王様とか言っているけど、ただの風俗嬢、そして、貴方はそのお客でしかないのよ」 ここは不思議な風俗店だった。プレイをしたお客が、そのままこ

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 今なお、地動説を信じている人がいるだろうか。もし、いたとしたら、その人は二千年遅れている。地球が丸かったのは二千年以上も前の話で、その頃から地球はへこみはじめ、今では、すっかりお皿型になっているのだ。こんなことは宇宙人に知り合いのいる人な

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 嫌いだから読まない、嫌いだから観ない、嫌いだから聴かない、と、そうした人は作家とか編集者ではなく、そもそも、ビジネスに向いていない。作家も編集者も、いや、ビジネスをする人たちは、すべて、嫌いでも読む、嫌いでも観る、嫌いでも聴くのだ。そして

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