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日記一覧

無味異臭。その23
2023年07月31日16:38

糊口、その7「小学校の運動会。何年生の運動会だったのかは覚えてない。ただ、その時、大勢の子供がいて、大勢の大人がいて、その中に私もいて、誰が誰か分からなくて、私と他の子の違いも分からなくなったら、怖くなったの。寂しくなったの。ここにいるのは

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無味異臭、その22
2023年07月29日14:52

糊口、その6 女が話をしたいときには、髪を撫でたりしてはいけない、ましてや、身体に触るなどは子供に等しい、しかし、接触ないのは女に冷たい、そこで、手の平に触れるように、と、教わったのは、やっぱりソープ嬢だったような気がするのだが、それがいつ

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無味異臭、その21
2023年07月28日16:43

糊口、その5 温泉は栃木だったが、それでも、雪が深く、筆者たちは雪を嫌って、車ではなく、電車で旅館に向かった。 電車を降り、乗り合いバスを使い、途中からは雪の中を徒歩でその旅館に向かった。旅館は何しろ古い、そして、部屋は寒い。寒い部屋にスト

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無味異臭、その20
2023年07月27日15:08

糊口、その4 タンスの中には無造作に突っ込まれた一万円札があった。やたらと無造作に突っ込まれているために、そこにいくらあるのかも分からない。いくらあるかも分からないほどの量の一万円札がそこにあったのだ。「どうせ、タンスの中とか見ないと思った

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無味異臭、その19
2023年07月26日15:04

糊口、その3 五月六月はよかった。しかし、七月に入ると、日本は異常な猛暑となった。彼女のマンションは安アパートではない。しかし、広めのワンルームに窓は一つ。安いマンションでない分、風が抜けない。エアコンが故障していると、ベッドの上のマットの

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無味異臭、その18
2023年07月23日16:07

糊口、その2 その日、彼女は店に出る日だった。まだ六月だというのに真夏かと思うほど暑い日で、その日、はじめてつけてエアコンが故障していることが分かった。業者と連絡をとって来てもらおうかと彼女に言ったが、彼女は返事をしなかった。そしてしばらく

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無味異臭、その17
2023年07月22日15:16

糊口、その1 すごく古い話を書こうかと思う。思えば、それは、もう、四十年近く前のことになる。筆者は学生ながら、まだ、日本にいくつかしかないエロビデオのメーカーの一つを経営していた。学生にしては儲かっていた。しかし、それは一瞬のことだった。数

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無味異臭、その16
2023年07月21日16:42

ハンバーグ、その4 来る時とは違い、帰りの高速では筆者たちは良く話し、良く笑い、歌まで唄っていた。ところが、車が調布を過ぎたあたりから、再び彼は暗くなった。意外と感情の起伏の激しい男なのかもしれない、と、筆者は思った。「奥田さん、ダメだわ」

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無味異臭、その15
2023年07月20日16:58

ハンバーグ、その3 漠然とした恐怖を抱いたまま、しかし、車は山梨郊外の地味な一件家仕立てのレストランの小さな駐車場に入った。まだ、インターネットのない時代である。そうした店を知るためには口コミの情報か、雑誌などしかなかった。ようするに、そう

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無味異臭、その14
2023年07月19日16:39

ハンバーグ、その2「奥田さんはいいよなあ。エロ本が仕事なんだもんなあ」 中央高速を飛ばしながら、彼が言った。そうしたことは、よく言われることだった。実際には、エロ本の仕事にいいことなどない。稼ぎは悪いし、あまり日常では職業を口にすることは出

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無味異臭、その13
2023年07月18日16:05

ハンバーグ、その1 真っ青な色のスポーツタイプの車。その車は新宿駅でさえ十分に目立っていた。ところが、新宿駅は、いつだって曇天気分なので、その青は街に馴染むことはなかった。 半地下のターミナルで待つ筆者を、左手を少し動かすだけの合図で乗せる

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無味異臭、その12
2023年07月17日16:20

蕎麦、その4「悪いけど、ボクのテクニックはそこまでじゃないですよ」 昼間に蕎麦を食べ、夕食は温泉旅館で食べた。彼女は酒も飲んだが、酒にさえ無感情で、あまり酔った様子は見せなかったし、そこまで好きではないようだった。そして、それは筆者も同じだ

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無味異臭、その11
2023年07月16日18:19

蕎麦、その3 高速道路を降りて一時間近く走る。あの頃、すでにカーナビはあったが精度は極めて悪かった。カーナビと地図を見比べたりしていた。そこまでして、たかが蕎麦を食べに行くのだ。十割蕎麦と言うが、筆者にはよく分からなかった。筆者には感性があ

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課題小説
2023年07月15日15:41

ちょっと長いので、下記の場所でお読みください。なお、他の方の作品も同じ場所にアップされます。https://mixi.jp/view_bbs.pl?comm_id=1213631&id=100346460#comment_id_1600407025

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無味異臭、その10
2023年07月14日16:09

蕎麦、その2 女王様が似合う女がいる反面、М女がどうにも似合わない女というものがいるものなのだ。彼女がまさにそれだった。顔もスタイルも悪くないが、少しばかり男っぽいのだ。そうした女王様が好きなМ男は少なくない。しかし、少年のようなМ女を望む

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無味異臭、その9
2023年07月13日15:53

蕎麦、その1 今でも筆者は女の服を褒めることが苦手だ。素敵な服なので、さぞ高級そうだと褒めると、安物なのよ、と、言われたりする。これは安い服なのだろうな、と、無言でいると、他の誰かがその服の高級ブランドに驚いた発言をしたりする。 性風俗嬢と

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無味異臭、その8
2023年07月12日16:25

夜食のうどん、その2 ドアのカギが開いていた。彼の会社のカギは彼の仕事を引き受けた数人の編集者がそれぞれ所有していた。自分の仕事が終わるとカギを社長に返すという仕組みだったのだ。ゆえに、カギが開いていても不思議ではなかった。しかし、部屋に入

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課題小説
2023年07月12日00:32

少し長いので、こちらで、お読みください。他の方の作品もこちらにアップされます。https://mixi.jp/view_bbs.pl?comm_id=1213631&id=100248918#comment_id_1600310762

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無味異臭、その7
2023年07月11日14:49

夜食のうどん、その1 分割で支払われるのはギャランティだけはない、雑誌製作にかかる必要経費 さえもが分割になった。五万円の取材経費が二万円、三万円と二回に分けて支払われるようになった。十五万円かかる撮影経費などは、三回に分けて支払われたりし

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無味異臭、その6
2023年07月10日17:02

パセリ、その4  深夜の環八は嘘のように車が少なかった。あの頃の環八は深夜でもそれなりに車が走っている道路だったのに、その夜は車がほとんどなかったのだ。一時間もあれば、と、筆者は言ったのだが、店には三十分もかからずに着いてしまった。 バジル

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無味異臭、その5
2023年07月09日04:29

パセリ、その3 人にとって、もっとも恥ずかしいのが排泄姿を見られることだと筆者は考えている。これは民族にもよるし、人にもよるらしいが、筆者にとっては、それこそが羞恥の極みなのだ。ところが、彼女はその恥ずかしい姿を誇らしく男たちに見せ、男たち

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無味異臭、その4
2023年07月08日14:41

パセリ、その2 リライトをしながら、それとなくエロ本に相応しいところの文章の書き方のようなものを教えているつもりだった。ところが、一年もそんなことをしていると、その女の単行本の出版が決まった。筆者は、安いエロ雑誌に三文の告白手記を掲載する程

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無味異臭、その3
2023年07月07日16:45

パセリ、その1「不味くないの」「美味しいと思いますよ。それに栄養価が高いそうです。この商売しているとビタミンが不足しますし、ビタミン剤を買えるほど裕福でもないですし、それに、食感が楽しいので気晴らしにもなります」 あの頃、筆者は二十代の後半

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無味異臭、その2
2023年07月06日15:15

引っ越し、その2「食べて行くでしょ。電車なんだからお酒も飲むでしょ。シャンパン、抜いてもいいかなあ。もちろん、私も飲みたいから」 何度か断ったのだが、彼女の寂しさに押し切られてしまった。「店、辞めるんですか」「うーん。やっぱり、気まずいよね

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無味異臭、その1
2023年07月05日16:37

引っ越し、その1 SMクラブの電話番とSMクラブのルポライター。その関係が深いはずがない。実際、彼とは酒、食事どころか、お茶さえ飲んだことがなかった。その彼がどうして筆者に、引っ越しの手伝いを依頼して来たのか分からない。もしかしたら、筆者の

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 さて、休みながら、いろいろ考え、やはり、食べるということについて軽く書いて行こうかと考えている。長短織り交ぜて、食べるを中心に、性風俗嬢のこと、エロ本関係者のこと、マニアたちのことなどを書いて行こうかと思う。ただ、これまで筆者は、自分のこ

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 食べるという行為がエロティックなものであり、食材という物がエロティックなものであり、料理という行為がエロティックなものだ、と、これは常識と言ってもいいかもしれない。しかし、これだけインターネット上に食べるという内容の扱いはあっても、あるい

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 しばしば誤解されることに作家の好き嫌いというものがある。思えば好きな作家の話というものは、あまりしないものなのだ。もっとも、嫌いな作家の話はまったくしないものだ。誤解されるのは、比較的悪口を言っているところの作家なのだが、これは、嫌いとも

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「情けない仕事だな」と、何度言われたことだろうか。エロ本屋とは面白い仕事なのだ。遊びの現場では、羨ましい仕事だと言われ、真面目な場所では「情けない仕事」と揶揄されるのだ。そして、その中に何十年もいて、筆者は思うのだ。本当にその通りの仕事なの

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