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日記一覧

 SМクラブの取材で知り合ったМ女に誘われて、都内のホテルでこっそりと行われているパーティに参加したことがある。取材ではない。М女の恋人という設定で参加したのだが、実際には、恋人どころか、お茶を飲んだこともなかった。そのМ女と知り合ってから

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 山荘は筆者が外見から感じたままの、小綺麗でお洒落な雰囲気のものだった。山小屋風には誂えてあるものの、中はただのホテルなのだ。ただ、受け付けのカウンターの中にホテルマンは立っていなかった。営業している様子がないのだ。 靴を脱いでロビーに上が

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 まだ、携帯電話どころかポケベルさえないような時代。筆者は山梨のどこかの駅で電車を降りていた。取材だった。駅名も覚えていない。駅前には何もなく、観光地でもないので、お土産屋のようなものさえなかった。小さな商店街らしきものはあるが、どの店も日

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 さて、企画を考えるという企画なのですから、これは六話ぐらいで終わるのが調度いいことでしょう。終わるにあたって、次の企画を決定させるというのも、これもそうすべきものだと思います。 いろいろ考えて、最後の企画から、やはり、ありそうでなさそうな

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 いつも行く深夜のファミレスに入った瞬間に違和感を持つことがあります。いつもの店員がいないのですが、しかし、そんなことはファミレスを利用していれば、そう珍しいことではありません。その度に違和感を持つのもおかしいものです。 席について見回すと

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 深夜の街を歩いていると、これは何のためのものなのだろうと思う建物を見ることがあります。水門だったり、倉庫だったり、工場だったり、宗教的な建物だったりするケースが多いのですが、中には最後まで、何だか分からない物もあります。 そういえば、筆者

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 喫茶店やファミレスには、基本的に何かを書くために入っているわけです。休息しようとか、コーヒーを味わいたいという思いで入ることはありません。そもそも、コーヒーの味など分かっていないでしょうし、コーヒーが好きかどうかさえ分かったものではないの

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 グリム兄弟は散歩をしながら童話を頭の中でまとめていたという話を聞いたからなのでしょうか。筆者は、時間が許す限り、散歩をするようにしています。これをウォーキングと勘違いされることがあるのですが、まったく違います。長い距離を歩くこともしないし

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 さて、深夜ファミレス。つなぎの企画としては、まあまあ、面白かったようで、これを長くという声もあったのですが、こうしたものは、短いのがいいように思いますので、ここは、半クルールで打ち切りということで。 打ち切ったところで、次の企画に行けると

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 ずいぶんと前の話になる。いつものように深夜のファミレスでモバイルを開いたとき、筆者の隣で店員の声が聞こえた。「あのう、何かご注文を」 いかにもすまなそうに店員は言っている。その不自然さに筆者は何かただならぬものを感じて、思わず注目してしま

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 クリスマスが近いというのに、確かに彼女は太り過ぎていた。その太った身体で、彼女の注文は少しばかり意外なものだった。「バナナパフェ」 それは、二年前の深夜一時のファミレスでのことだった。この時間にバナナパフェ。体重を気にしている筆者には意外

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 ケンカを見るのは好きではない。他人のケンカにもかかわらず、こちらも緊張させられるからだ。しかし、隣でケンカがはじまれば、これを無視することは出来ない。耳は自然と傾くものだ。耳を傾け視線は開いたモニター画面を凝視する。いや、実際には見ていな

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 キングダムが好きだ。あまりにキングダムが好きなので、あの時代の史実にまつわる本まで取り寄せて読んでしまったほど、筆者はキングダムが好きなのだ。 いつものように、深夜のファミレスでモバイルを開いた。コーヒーを飲みながら、これから書こうとする

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 こんなことがあった。深夜一時を過ぎたファミレスである。筆者はいつものようにモバイルを開いた。モバイルを開いてから、コーヒーを一口飲む、これがいつものパターンなのだ。 ところが、コーヒーを飲もうとすると、少し離れた席に女の子を見つけた。深夜

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 深夜のファミレスは集中してものが書けるので好きなのだが、たまに、どうにも書かせてもらえないことがある。昨夜もそうだった。 五十歳過ぎの男が五十歳過ぎのスナックのママらしい女を口説いていたのだ。そのぐらいは普通のことだ。その程度のことには興

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先生と師匠(おわり)
2017年10月14日00:58

 先生と師匠は何が違うのか、このことに疑問を抱いたのは、もう三十年以上も昔のことだった。そのときのことを思い出しながら、三十年後の、今、その考えがどう変わったのかを見直してみようとはじめた企画だったが、意外と面白くなってしまった。新鮮だった

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先生と師匠(その11)
2017年10月13日01:50

 ものを書く、本を作る、その上で、師匠と考えていた男が何人かいた。もっとも、たいていは、その相手からは嫌われていた。今も、おそらく嫌われている。「俺から何を教わるつもりだよ。そんなの自分で考えろよ。俺はお前の先生じゃないんだよ。いいか。編集

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先生と師匠(その10)
2017年10月12日01:31

 美しい人だった。ルポライターという職業で、彼女はルポ以外はいっさい書かないと言っていた。小説も、エッセイも、依頼があれば全て丁重に断るのだと言っていた。そのルポライターである彼女に弟子入りしているライターの女性たちがいた。筆者にはそれが不

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先生と師匠(その9)
2017年10月11日14:48

「まさか、これを読んでもらって俺に褒められるとか思ってないよねえ」 週刊誌の担当記者だった。週刊誌はとにかくギャラがよかった。支払いが滞るなどということもなかった。しかし、編集者たちは、皆、厳しかった。週刊ということで時間がないのに、面白く

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先生と師匠(その8)
2017年10月10日01:21

 新宿のバーで飲んでいた。相手は敏腕の編集請負人と言われていた男だった。「芸人さんのインタビューに行ってたんだって」 彼はバーボンをちびりと口に含んでそう言った。そして、筆者の返事も待たずに「羨ましかったろう」と、唐突にそう言ったのだ。何が

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先生と師匠(その7)
2017年10月09日01:32

 昔は、作家のところにも書生という名の弟子がいたらしい。しかし、今の世の中では、そうしたことは聞かない。ところが、画家やデザイナーのところには、かろうじている。漫画家のところにも、アシスタントという名の弟子がいる。 あるデザイン学校の先生に

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先生と生徒(その6)
2017年10月08日00:31

「理不尽に耐える生徒が弟子。相手が先生でも理不尽なことには耐えられないという生徒は、ただの生徒さん。生徒でもなく生徒さんね」 筆者には再現出来ないが、彼女は京都弁でそう言いきった。ある料理学校の取材で出会った京都料理の先生だった。もちろん、

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編集者と師匠(その5)
2017年10月07日15:43

 筆者は長く雑誌に関わりながら、わりとカメラマンとの相性が悪い。筆者の中に、画家は苦労して絵を描き、作家は苦労して文章を書き、デザイナーは苦労してレイアウトしているが、カメラマンはシャッターを押しているだけという偏見があるからなのだ。そして

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先生と師匠(その4)
2017年10月06日15:12

 服飾デザイナーを取材したことがあった。ステージ衣装専門の服飾デザイナーということで、普通の洋服のデザインとは少し違うらしいが、その内容は、そうしたことに、いっさい興味のない筆者には、まるで分らなかった。「そうね。私の会社の子たちは、私の弟

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先生と師匠(その3)
2017年10月05日00:55

 空手道場の取材に行ったことがあった。規律正しい練習生の子供たちがいた。決して新しくない道場は、しかし、隅々まで掃除が行き届いていた。生徒は子供から大人までいるらしいが、取材が昼間ということもあって、本当に小さな子供ばかりが練習していた。「

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先生と師匠(その2)
2017年10月04日04:35

 あるミュージシャンにインタビューしているとき、彼は、こんなことを言った。「それが音楽として間違っているかどうか、私のところで音楽をやっている若い子は、そんなこと考えていませんよ。彼らは、音楽としての正しさを私に求めているのでもないし、学校

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先生と師匠(その1)
2017年10月03日15:33

 小説のおわりだけを書くという企画は思っていた以上に面白いことになった。このおわり方なら、冒頭は、と、考え、このおわり方なら主人公は、事件は、と、考えると、それまでには考えてもいなかったようなストーリーが生まれた。 筆者は、常々、目的なくは

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小説のおわり(おわり)
2017年10月02日17:31

 ゆっくりとカギを回し施錠した。このドアを私の手で開くことは二度とないだろう。二十年前なら、こうした仕事の後は、決まって新宿のバーに行ったものだった。しかし、今の新宿には私の居場所はない。知らない飲み屋に行くには、私は年をとり過ぎた。だから

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 私は、来生田かおるに鋭い人差し指を向けて言った。「あなたには犯罪者としての注意深さに欠けているんですよ。そして、私を甘く見過ぎていたんですよ。私には最初から分かっていたんです。分かっていて、あなたにチャンスを与えていただけなんですよ。何し

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