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2014年12月21日13:03

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迷子の言い訳(その2)

 迷子になると分かっていて、筆者はルポを生業としていた。おかしなものである。たとえば風俗取材でさえ、今ほど便利ではなかったというのに……。筆者が主に取材していたのはマニア風俗なのだから、駅から歩いて二十分なら近いものだった。駅から三十分。タクシーに乗ればすぐだが、タクシー代は経費として出ない。仕方ないので歩く。そして迷子になる。
 それでも、都会にいる風俗取材は、まだ、いいほうだった。
 たいへんなのはオカルト取材だ。こちらは、ほとんどが地方にある。しかも、風俗のように電話で案内してくれる人もいない。地図だけを手がかりに目的地を探すのだ。
 どうして、そんな不似合いな仕事をしていたのかといえば、理由はかんたんなのだ。筆者には自分が迷子になるという自覚がないからだった。
 風俗店の取材では、およその場所は取材の約束をした時点で聞いておくものだった。ゆえに、取材先のある駅に着くつ、まず、それを確認しようと駅前で地図を見る。筆者が取材を生業としていた頃にはカーナビもスマホのナビもないので、駅前にはたいてい便利な地図があったのだ。
 そこで現地の場所を確認する。地図に目的地があると安心する。何しろ、取材先はこの世に存在していることが確認出来たのだ。この世にあれば安心していい。
 そこで、喫茶店に入る。一時間ほど時間をつぶす。取材先に電話を入れる。地図で見た銀行のある道を行くのだと確認がとれると、もう着いた気になる。先方が言う銀行と筆者が地図で見た銀行が同じかどうかは気にしない。銀行が偶然に二つある確率は低い。そんな低い確率まで気にするなら目の前に隕石が落ちて来る確率だってあることになる。そこまで心配していたら、人は、歩けなくなるのだ。
 銀行の先の三つ目の交差点の信号を左。信号は三つある。たいていの道には三つぐらいの信号はあるものだ。そこに文房具屋があると聞いたがそれが乾物屋でも気にしない。缶切りを文房具と勘違いしている人だっているものだ。そして、迷子となる。
 どうして、こんなことを書いていたのか忘れた。ここから、筆者が性に迷うというお洒落なオチに向かうはずだったのだが、どうやってそこに結びつけるのかを忘れたのだ。
 これだから書けないときというのは困るのだ。
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