mixiユーザー(id:2938771)

日記一覧

憂鬱な企画、その1
2020年06月30日15:31

 流行したのは「大統領のように働き、王様のように遊ぶ」というコピーだっただろうか。記憶は定かではない。いいコピーだと思った。大統領はけっこう遊んでいるだろうし、王様はそんなに暇ではないと思うが、それはいいのだ。どうでもいいのだ。 そいえば、

続きを読む

バー小夜子にて、その12
2020年06月29日00:41

 不思議なことがあったのだということを思い出した。今から四十年近く前。筆者は小夜子というバーでユキコというファッションモデルとしか思えないような美女と賭けをしたのだった。 賭けは、深夜の公園で筆者が全裸になり、そこで自分のそれを興奮させるこ

続きを読む

「月は凍っていたかい」 夏の夜だった。むしろ、月が熱帯夜に溶けてしまうのではないかと思うような暑い夜だった。「外は恐ろしいほど暑いですよ。もう、こんな時間だと言うのに、歩くと汗ばむほどです」 深夜二時を過ぎていた。しかし、涼しくなる気配さえ

続きを読む

「そういやあ、あんたはエロ本を作っていたっけねえ」 四十年近く前に筆者が作っていたのはエロ本などと呼んでいいようなものではなかった。ビニ本、あるいは、ビニ本型のマニア雑誌という程度のものだった。それでも、それなりに少ない予算で必死に作ったも

続きを読む

バー小夜子にて、その9
2020年06月26日17:14

「ママ、冷房、効き過ぎじゃないですか」 そういえば、その店は四十年近く前に通っていた頃にも妙に寒い店だった。夏の冷房は分かるが冬も寒かった。筆者はあの頃、冬にその店を訪れた時には、防寒のジャケットを着たままカウンターに座っていたものだった。

続きを読む

バー小夜子にて、その8
2020年06月25日16:23

「なーんだ、また、あんたかあ」「仕方ないじゃないですか。この店、あまりにも寂しいんですから、別に、私が他のお客を追い出しているというわけでもないんですから。また、私ってことで、仕方ないんじゃないですか」 四十年近く前も、そして、今も、その店

続きを読む

バー小夜子にて、その7
2020年06月24日00:08

 ママは酔っぱらうと自分は秘密結社の一員なのだという話をはじめた。これが面白かった。秘密結社は、時には世界滅亡を導こうと画策するものだったり、時にはエロの神髄を極めようとするものだったり、あるいは、魔術と呪術を行うものだったりした。ようする

続きを読む

バー小夜子にて、その6
2020年06月23日00:03

「こんな店をやっているとねえ。安い女が来るのよ。そして、安い女探しに安い男が来るのよ。そいつらが悲しいほどエロを安くするのよ。古書店で、ひと山いくらのワゴンに乗せられた古本のようにエロがされるのよ」 そういえば、ママは酒が入ると詩の朗読をは

続きを読む

バー小夜子にて、その5
2020年06月22日15:29

「そういえば、音楽が流れてませんね」 その店に筆者が通っていた四十年近く前には有線放送が流れていた。「音楽ねえ。こんな店で音楽を流していられる余裕はないってことなんじゃないの。何もかもが値上がりする世の中でね。エロだけは値下がりしたんだから

続きを読む

バー小夜子にて、その4
2020年06月21日00:10

 昔、そのバーに通っていた頃にも、いろいろな意味で不思議な店だった。その店で遭遇したオカルティックな事件も多く記憶している。今、こうして四十年近くが過ぎて、あの頃のことを思い出すと、時間にも、いろいろな矛盾があったことが分かってきた。 その

続きを読む

バー小夜子にて、その3
2020年06月19日00:02

「仕方ないねえ。今夜は特別だよ」 そう言ってママは冷蔵庫から焼きそばの麺を取り出し、野菜など用意していないものだから、唯一ある長ネギと、これまた、たまに気まぐれで作るウインナー焼きのためのウインナーを刻み、それで焼きそばを作ってくれた。「年

続きを読む

バー小夜子にて、その2
2020年06月18日15:18

「なんだ、また、あんたか」「四十年前にも同じような台詞を聞きました」「そんなにやってやないよ。この店を引き受けて、ほんの二年だよ」 そこまで含めて、台詞は昔のままだった。「まさか車で来てるんじゃないだろうね」「まさか。意外と家の近くにあるの

続きを読む

バー小夜子にて、その1
2020年06月17日00:23

「乾き物とチョコレートぐらいしかないよ」 酒の肴を要求されるとママは必ずそう言い返していた。その店のママではない。それは筆者が四十年近くも前に通っていた店のママのことだ。ママと言っても、あの当時で年齢は六十の前後と思われた。同じママが今も現

続きを読む

暗い企画、その6
2020年06月16日00:15

 食をテーマとしたエッセイや小説を読む度に、食べるという行為をあまりに入念に書き過ぎるとエロになるなあ、と、そう思う。身をほぐすとか、むしゃぶりつくとか、口に含み舌先でころがす、と、何を表現しているのか誤解を招く表現が多い。もちろん、これは

続きを読む

暗い企画、その5
2020年06月14日00:31

 雑誌は面白かった。およそ興味のあるところの雑誌を買ったところで興味のない記事は少なくない。読まない記事のあることを前提で一冊の雑誌を買っていた。それでも、時間が余ると、いつもなら読まないエッセイや記事を読んだりする。それが面白かったのだ。

続きを読む

暗い企画、その4
2020年06月13日15:05

 喫茶店に入り、パソコンに向かうと、一時的に無我の境地に入ることがある。一心不乱となって小さなキーを叩いているのだ。その時、隣に女性が座った気配を感じたが、別に、喫茶店なのだから、それは珍しいことではない。気にもしないままキーを打ちながら、

続きを読む

暗い企画、その3
2020年06月12日00:08

 車を降りて少し歩いたところで違和感があり、慌てて車に戻った。施錠の確認。施錠してあった。それでも違和感が消えない。ドアを開け、中を確認したところでマスクをしていなかったことに気付いた。ハンドル横のシフトレバーにぶら下がった白いマスクを取り

続きを読む

暗い企画、その2
2020年06月11日00:10

 七つのエラー探しというゲームが好きだった。見慣れた喫茶店やショッピングセンターで、立体となった七つのエラーをやることがある。レイアウトが少し違っているからなのだ。本当はいくつあったのか分からなくなったテーブルの数。なくなった商品。なくなっ

続きを読む

暗い企画を、その1
2020年06月10日15:25

 いつものように喫茶店に入る。たくさんあった席が間引かれている。それでは空いている座席がないかというと、意外なほど席は余っていた。恐怖を煽られ続けると人間は余裕を失うものなのだ。逆に言うなら、余裕を持つことによって人間は恐怖を克服出来るもの

続きを読む

官能の裏側、その6の4
2020年06月09日00:03

 その夜まで、筆者は安いジンをコーラやファンタで割って飲んでいた。ジンは不味い酒だと思っていたからだ。しかし、老婆の出したジンはストレートで飲んで死ぬほど美味かった。あまりの上手さに、必然‎的に、舐めるような飲み方になってしまった。ゴ

続きを読む

官能の裏側、その6の3
2020年06月08日15:50

「私がマニアだとか、元はSМクラブをやっていたなんて言うと、すぐに、SなのかМなのかって尋ねる人がいるんだよ。そして、私がどんなプレイが好きなのか、そう尋ねて来るんだよ。じゃあ。料理でフレンチが好きだと言ったら、何が好きか尋ねるのかねえ。ス

続きを読む

官能の裏側、その6の2
2020年06月07日00:53

 元SМクラブのママがやっているバーにしては気取った酒がない。SМに限らず風俗嬢が店を出すと、たいてい無理のある高級な酒が揃うものだ。ところが、その店はモルトウイスキーが二種類、バーボンウイスキーが一種類、ワインやシャンパンはなく、なんと、

続きを読む

官能の裏側、その6の1
2020年06月05日00:06

「なんだ、あんたか」 新宿歌舞伎町の飲み屋は面白い。雑居ビルに並んで飲み屋が連なるのだが、上階に行くほど客は少なくなり、だからというのではないのだろうが、上階に行くほど料金が高くなる。もちそん、それは筆者の感じ方で、実際のところがどうだった

続きを読む

官能の裏側、その5の4
2020年06月04日00:13

 その男は、筆者は出版に関わり続けることが出来るだろうが、自分は無理だと心配していた。確かにそうかもしれない。しかし、出版かもしれないが、たかがエロ本である。その男のどこか憎めないところとか、女にはモテるところを上手く活かせば、その男のほう

続きを読む

官能の裏側、その5の3
2020年06月03日00:20

 筆者は早食いの大食いだった。今では、そんなこと自慢にならないどころか、むしろ、それは欠点になる。ところが、あの頃は、早食いと大食いは男らしいなどと言われていたものだったのだ。顔とスタイルでモテない、頭もよくないし、運動も‎出来ない筆

続きを読む

官能の裏側、その5の2
2020年06月02日00:15

 いかにも暴力的な若者たちの案内で奥の部屋に通されるのは何度体験しても慣れるものではない。しかし、奥の部屋に通れば、意外とリラックス出来るものだから不思議だ。しかし、そんなことは言わずに、恩に感じろとばかりに、大袈裟に‎恐ろしい事務所

続きを読む

官能の裏側、その5の1
2020年06月01日15:14

「匿ってくれ」 そんな電話一本で、その男は、いいとも、悪いとも聞かずに、部屋にやって来る。断わろうにも、あの頃は携帯電話などというものがないから、外からの電話で、一方的に切られてしまったら、もう、こちらからは連絡がとれなかったのだ。貧しいエ

続きを読む