mixiユーザー(id:2566286)

2026年02月06日16:43

26 view

『仁義』覚え書き


 『仁義』(Le Cercle Rouge 1970; ジャン=ピエール・メルヴィル)購入していたので観る。おもしろかった。フランス映画でもフィルムノワールは暗いしトロいしで関心があまりなくそんなに観ていないのだけれど、ネオ・ノワールと言われる、カラックスは『汚れた血』とリュックベッソンは『サブウェイ』とジャンジャックベネックスは『ディーバ』を購入し観賞するにあたり、フレンチ・ノワールを少しはおさえておかなければ、そしてまた、トランプがグリーンランドを手に入れようとするなかEU各国の団結を願い、アメリカはトランプ政権の官僚たち、すなわちビジネス交渉は知っていても政治の経験ゼロの者たちに対抗すること、それこそが市民の手にゆだねられたフランスであり、フランスは専制国家を倒し自ら自由を手にしたリベラルな国家であり、それをウンコチンチン、、、、、失礼しました、私としたことが、、はしたない言葉を使いまして、、もとい、オンコチシン、温故知新で省みフランス芸術を観ようとなる。知っておかなきゃネオとの比較もできへん、と観ようかな、と、で、『仁義』はまーえに観たときなにかおもしろかった記憶があるし、こうしたチーム行動ものは好きだということもあり(註1)、だいぶ前に購入するもほったらかし、で、フレンチにハマってるのでこのときとばかりに観賞。アランドロンのフレンチノワールなんか、無口で、美男がキドってスカしてただ突っ立ってるぐらいで、こいつ大根役者か、と思っていたのだけれど、調べると、まだ戦争の記憶がまざまざと体感として残る時代、ヴィシー政権に対して生まれた不信や密告者や裏切りへの苦味の残滓がフレンチノワールに反映されているようであり、無口でクールなドロンに美顔と相なり戦後の苦悩が映し出される、そんなセンスがどうやらあるようで、なるほどな、となりヒトに歴史ありなんだなとなる(註2)。ヌーヴェルヴァーグの父とも称されるメルヴィルはゴダールなんかからもリスペクトされ、それはたぶんほぼほぼインディーズに近い前期の製作メソッドが当時若人のフィルムメーカーたちに影響を与えたのかな、となるも、後期はベベル主演の『いぬ』ぐらいから暗黒街ギャングものでのフレンチノワールを大量制作しだし本作品『仁義』はその集大成なるものか、となるも、前作『影の軍隊』のようにプロットの積み重ね細かいディテールが表され、本作もまたそうしたものは表され、また、やはり『RONIN』はメルヴィルへのオマージュあるなと悟り、ノワールなバックグラウンドある主人公たちはお互い相手の素性を知らない(註3)しそれでも互い信頼してるようだし、でも一方でプロセスのなか裏切りも起こること本作品でも表される。本作品もまた『RONIN』と同じように豪華なキャストである。メルヴィルの『サムライ』から本格的にトレンチコートが似合うギャングノワールに出演スタートしたドロンがおり、スパゲッティ―ウェスタンで名声を得た後であり政治ドラマに入る前の演技派ボロンテがおり、そして射撃の名手は御大イヴモンタン。彼らのチームがカッコよく、彼らの間にそこはかとなくもアツい絆が描かれること、それがきっとメルヴィルが描きたいものでありそこに演出が光る。プラン実現のプロセスのなかディテールが描かれ、そのなかにもまた絆がちゃんと描かれている。プロフェッショナルがそこに表される。ダンディズムがそこに表される。それが本作品の醍醐味である。また、豪華なキャストのなか、ブールヴィルもまたよかった。彼は有名なコメディー俳優であるがブールヴィルは彼が出演している作品の予告編以外ではちゃんと観たことがなく、ルイ・ド・フュネスのはあるのだけれど、それゆえ、どんなコメディアンかを分からないのだけれど、イメージとしてはディズニーのグーフィーのような感覚かな、でもさ、本作の彼はヴェリー・ダンディで面食らった。暗黒街と渡り合うことできる敏腕警視を演じている。いろんなこと熟(こな)せる素晴らしいアクターなんだな、と感銘する。も、特典に入っていた助監督が当時の思い出を語るドキュメンタリーでは、プロデューサーがブールヴィルを暗黒街チームを追う刑事に推すのをメルヴィルは面食らったらしいことが明かされている。意外なキャストはメルヴィルの意図ではないんだな。でも、ほほー、と思ったのは、メルヴィルはブールヴィルを高級ブランドの洋服店とかに連れていきそういったものをブールヴィルに着させることによりブールヴィルは役柄を身に着けていったということ(註4)。イヴモンタンもそうだけれど、ブールヴィルもミュージックホール出身だから覚えることは次々とこなして早かったそうである。豪華なキャストと細かいディテールと強盗のプロセスのスリル、絆と裏切り、メルヴィルはじっくり描いている(註5)。

*註1  レンタル落ちで、フィルムノワールではないけれど、チームでアクションの『ナバロンの要塞』を購入していたんだよね。名作と言われる本作品、これまで一回も観たことがなく、観なきゃと思い出す。

*註2 アランドロンが60〜70年代の日本に受けたのは、フランスでは暗さ・堕落・曖昧さが価値として評価されたとのこと(註7)だが、谷崎潤一郎の陰翳礼讃をもちだすまでもなく、60〜70年代の日本ではまだこうしたものが好まれることがあり、あらまー、ドロンは日本人好みにドンピシャなのであった、とさ。

*註3 おめー、なにやってショッピカレたんだよ?あっそうかそうか、おめーもか、俺もだよ、とか言い合うシーンはないし、たぶんそこまで聴くなな感じで互いを了解し同じ匂いのする者同士で信頼しているのだろう、と思われる。皆ほとんど無口だし。同じ匂いのする者同士の信頼関係はボロンテがクルマのトランクに隠れたからの一連のプロセスで示される。

*註4 ドキュメンタリーで助監督曰く、もちろんブールヴィルは興行収入を塗り替える作品にたくさん出ているなのだから、高級ブランドを買えたけれどそうしたものを身に着けることはそれまでなかった、と証言している。ちなみに、助監督曰く、リノヴァンチュラ(前作『影の軍隊』で主演)がメルヴィル型のアクターであるから、ブールヴィル演じた警視役を演じれなかったことでヴァンチュラはとても怒っていたそうである。

*註5 アメリカのフィルムノワールは主人公を翻弄し結局は裏切り殺されるファムファタールが重要な位置づけになるのだが、フランスのフィルムノワールではむしろ男たち同士の絆なりの関係性がフォーカスされるらしい(註6)。本作品においてドロンを裏切る女性が出てくるが、あまり大きな扱いをされていない。

*註6  そう考えれば、ネオノワールにはファムファタールが出てくるから、むしろアメリカのフィルムノワールに近いのかもしれない。ただし、主人公を翻弄すれど裏切るということはなかったように思う。記憶が正しければ。

*註7 フランス文学では「人間は善よりも、矛盾と欲望でできている」という姿勢があり、バルザックやボードレール、カミュなどをみればなるほど、となるよね。モーリスルブランがルパンを著したのも納得でありそのフランスでの人気も納得。



1 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2026年02月>
日 月 火 水 木 金 土
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728

最近の日記

もっと見る