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2026年01月10日12:58

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『セブン・ビューティーズ』覚え書き

 
『セブン・ビューティーズ』(Pasqualino Settebellezze / Seven Beauties 1975; リナ・ウェルトミューラー)おもしろかった。ウェルトミューラーとダブしたDVDに書かれていたしジャンカルロ・ジャンニーニも出てきたので『流されて… 』だと思い、どちらの作品もよく覚えていないなかで観ていると、明らかに様子が違い、あー、あっちかとなる。『セブン・ビューティーズ』を最初に観たとき気持ちが悪くなったような記憶があるけれど、コメディだと思って観ているとシリアスでマゾヒスティックな流れに変化したのできっとそうなったんだな、と思い返してみると、ラストのラスト、主人公の変化がなんだか分かるけれど言葉として説明が出てこないもの、その合点のなさが気持ち悪さだったのかな、となる。釈然としないわけではない。それでも、鏡に映る主人公の顔が言葉として説明できない(説明できるヒトもいようが)のがなにか異質感をもたらすのである。言葉での説明を超えたものが映像であり音楽であるから、それはそれで当たり前のことであるから、それはそれでいいのだけれど、ね。女性に好かれ家族の名誉を守り銃も携帯し気取っていながらのヤサ男で実は気弱なお調子者(註1)のそのエリアではちょっとした顔役であろう主人公、ジャンニーニはたしか三大映画祭のどれかで主演男優賞を獲っていたけれどきっとこれだな、と思わせるぐらい、ウェルトミューラーは彼のコメディサイドもシリアスサイドも存分に引き出している(註2)。本作品を観ていると、なにかフェリーニのオフビートな感覚やカメラワークをリマインドするのだけれど、調べると、彼女はフェリーニの弟子筋になるんだな、なるほど、とぼけた感覚の作風は似ている。けれど、ゾッとさせるようなセンスをいきなり引き出すことはフェリーニ以上かもしれない。さて、主人公は家族の名誉のため妹を手籠めにする男を殺し、自身はスマートだとばかりに死体隠しを画策するも警察にすぐに包囲され、ボスが手配した弁護士の考えに反し殺したことを自白し、弁護士は仕方なくも彼を精神病とさせ、お調子者である彼は病院では上手く楽な仕事にありつくも、しばらくご無沙汰とばかりに女性の入院患者に手を付け、病院スタッフから暴行を受け病院独房でクルクル巻きにされてベッドに縛り付けられ、院長から第二次大戦中だから(註3)精神病者も入隊できて病院から抜け出せると説明を受け、でもって戦争に行くが、本作の始まりの頃、彼は包帯を巻いて負傷者になりすまし戦場を脱走したことが表されるけれど、卑怯でもいろんな状況でどうにか生き延びようとする彼は本編いたるところで表されるけれど、人殺しの無意味を悟り部下を故郷に返したイタリアン軍人と一緒に逃亡を続けるも、途中で、それまで何度も遠くから見ていたユダヤ人たちを銃殺するドイツ軍につかまり、収容所へ、でもって、太っちょの威圧感ある女性収容所所長を誘惑しようとトライ、でも通じず、殺されるではなく生き延びようと這いつくばっておべっかを使い、ようやく受け入れられるも、脆弱した身体ではセックスもままならず、所長から、生き伸ばしてやる代わりに残酷な交換条件を突きつけられる、という流れ。7つの美はたぶん、カソリック的な定番の7つの大罪の皮肉な言い換えだと思うけれど、ジャンニーニが体現化する主人公は、ある意味もっとも人間らしさ的な7つのそれをやってのけ、お調子者でもって女性たちに助けられ悲惨な状況からもどうにか逃げきれていた彼は遂には残酷な状況とじかに面し(これもまた精神病院の女性院長と収容所の女性所長に導かれている)”生”に接する。なるほど、やはり凄い作品である。それはジャンニーニのアクトがあるからこそ、人間という悲哀や残酷が、人間味が、そして明るさも含めたそれら、喜怒哀楽が伝わるのである。

*註1  いわば、イメージするイタリアン気質をすべて持っているような主人公である。
*註2  ジャンニーニはカンヌ映画祭で主演男優賞をお獲得しているけれど本作ではない。でも、同じウェルトミューラーの脚本・監督作品『愛とアナーキーの映画』である。本作品の前作が『流されて… 』であり、その作品の前の作品が『愛とアナーキーの映画』のようである。ウェルトミューラーの作品って日本ではほとんど『流されて… 』と『セブン・ビューティーズ』のみが知られている感じだけれど、本国イタリアでは2年に1本つくるぐらいコンスタントにつくっていっているようである。
*註3  あまりにコメディ調だから、オープニングクレディットのヒトラーとムッソリーニの握手とそこから続く悲惨な戦争ドキュメンタリー映像- 爆撃や爆撃に伴うまるでゴミかのように横たわる死体たち、そこにかかる主人公のモノローグは賞賛される独裁者から落ちぶれていく専制国家をコメディ調の口調で語っている -を忘れてしまっていたけれど、本作は戦争の無慈悲をまずは語らしおん。
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