ゴーストライターおもしろかった。或る男性からすれば女性は理性と責任がないと映るんだろうけれど、女性からすれば理性と責任がないのは男性の方じゃない?ヴァイオレンスつくるのは男性よ、だから私もしていいの、的な逆説にも思える氷の微笑であるが、ラスト・シークエンスにおけるダグラスとストーンの会話で、ジャンジャン子供をつくろうと言うマイケルに対して、シャロンは子供は嫌いと返し、マイケルは、それならふたりだけで暮らそう、みたいなこと言ってたけれど、そこにはヴァ―ホーベンの、人間は普遍的に残忍である、という批評眼があるように思える。男性も女性もそんなに残忍ならこの世界に増やす必要はないだろう、というような。ゴーストライターもまた残忍な(男性女性がいる)世界が表される。そして最後には死人に口なし、勝利者は女性、というのも同じとなる。アメリカの犬になり下がったイギリスが表され、それはもう帝国の衰退である。そしてそれを促進させるのは、マクベスの奥方であり、そしてそれはサッチャーやアッキーエやトラスを言い表すことになるのかもしれない。首相の死も奈良で起こった、あの事件を思い出させる。けれどそれは宗教がらみの恨みではなく、デモクラシー国家という名のテロ国家たちに対する報復として表される。プーチンもそのうち動員令で連れてかれた若人の父兄に同じことされるかもしれない。最近はかつてほど聴いてくれなくなったけれど、夫へのなにげない助言がイギリスを悪の道に導いている。我々の眼のまえには世界という名の空白が拡がるばかりなのである。
ポランスキーはそのモンタージュ、なにか空白感というか虚無感を生みださせるのがいつもあって、その持ち味が本作ではとても活かされている。さりげない使い方のイーライウォラックやティモシーハットンもいい。アメリカにある、イギリス風な無味乾燥な白い砂浜も作品にフィットしている。たぶんイギリスで撮影されたのだろうな、ポランスキーはアメリカに入国できないもの。
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