☆通り Ext.
容疑者である松村と後藤が歩いている。
松村「こないだのワイドナショー見たかよ。三浦瑠璃とトラウデン直美が出ててよ、あれは神回だったよなー」
後藤「お前、そんなんで見てるのかよ、はしたない奴だな、もっと経済とか政治とか、そんなのに興味を持って見ろよ」
松村「ワイドナショーで?」
後藤「おい、ヤバい、デカだ」
松村と後藤は逃げるために駆け出す。ふたりの刑事が追いかける。
走るふたりの刑事。
タイトル:デンジャラスな刑事(ルビでデカ)ジェイク&マック&テーマ曲とオープニング・クレディット
☆通り Ext.
ショット内に入ってくる刑事。
刑事1「おれ、杉田二郎。ジェイクって呼んでくれ。おっと、こうしちゃいられない、ホシを追わなきゃならないんだ、またな、See you。」
ジェイクは右手人差し指と中指を額に当て、それから、またな、というジェスチャーをして、こちらに向かって微笑む。白い歯がキラリ。彼は松村と後藤を追って駆け出す。
ショット内に入ってくるもうひとりの刑事。
刑事2「俺の名前は、勝久正文。Call me マック。俺とジェイクはアメリカ育ちの日本人。悪を憎んで人を憎まず、それが俺たちデンジャラスな刑事のモットーさ。それじゃ、また後でな」
マックはその場で宙返りをして、白い歯をキラリと見せる。彼は松村と後藤を追って駆け出す。
松村「お前はあっちに行け、俺はこっちに行く。」
松村と後藤はふたてに分かれる。
ジェイクとマックもふたてに分かれ、ジェイクは松村を、そしてマックは後藤を追いかける。ジェイクとマックはそれぞれバルクールしながら、捕獲対象を追う。高い塀を越えたり、壁を垂直に走ったり、宙返りして着地したり、と、ジェイク&マックは無駄な動きが多いため捕獲対象になかなか追いつけない。
松村と後藤は戸越銀座に逃げ込む。ジェイク&マックは合流する。ふたりは互いを見つめ、頷く。
ジェイク&マック「いつものアレだ」
ふたりはクルっと半回転して後ろを向く。そのまま、バク転しながら戸越銀座に入っていく。横に並んでバク転するジェイク&マック。通行人はなぎ倒されていく。
「キャーッ」
「助けてくれっ」
「神は我々を見捨てた」
「オーマイガッシュ」
悲鳴が戸越銀座にコダマする。
☆警視本庁 Int.
クレームの電話が殺到。
☆警視総監室 Int.
警視総監「(受話器を持って)野犬は放すなと言っていたはずだ」
☆七曲湾岸署署長室 Int.
藤田署長「責任は私が持ちます」
署長は電話を切る。岡本麗巡査部長を見る。ふたりは見つめ合う。
藤田署長「私は彼らを信じている。」
岡本麗巡査部長は黙って頷く。彼女は微笑む。
☆通り Ext.
バルクールとバク転のやりすぎで、ジェイク&マックはふらついている。通行人の女性がふたりに駆け寄ってくる。女性はジェイクの腕をもって揺らす。
女性「刑事さん、悪党たちはクルマで逃げたわ、(逃げた方向を指さしながら)あっち」
ジェイク「お嬢さん、ちょっと質問があるのですが、自動車はお持ちかな、haven't you?」
女性「(ジェイクをウットリした表情で見つめながら)ええ、持ってますとも。悪党を追いかけるのに、どうぞお使いあそばせ。(彼女の自動車を指さし)あれです」
ジェイク「サンキュー、マイエンジェル」
ジェイク&マックはその女性の自動車の側に行く。
女性「刑事さん、キーよ、ほら」
女性はキーをジェイクに投げる。ジェイクはその場でムーンサルト・ジャンプをして着地と同時に、キーをキャッチ。マックはバク転で自動車のまわりをまわるまわる。
☆車内 Int.
ジェイク&マックは自動車に乗り込む。とうぜん、無駄な動きが多いふたりは、捕獲対象を見失ってしまっている。
マック「またチャンスがあるさ」
ジェイク「明日が来ない今日はない」
ジェイク&マックはDAPする。
☆通り Ext.
自動車の所有者である女性は微動だにしない彼女の自動車を見ている。彼女は夕焼けの空に目を移す。黒煙が遠くで上がっている。
エンド・クレディット
その後の登場人物たち
藤田署長は警視庁アラスカ註屯所に左遷され、岡本麗巡査部長は警視庁シベリア註屯所に配属される。ふたりの愛の炎は、ベーリング海峡に隔てられても、消えることはなかった。
ジェイク&マックはいまも日々、東京の繁華街でバク転しては人民をなぎ倒していっている。
高速道路高架下、落ちて大破している自動車の側で、投げ出された松村と後藤が傷をおって倒れている。
後藤「なぁ松村、生きているか」
松村「ああ、目の前がだんだんと暗くなってきやがるぜ」
後藤「ムシケラの生き様、楽しかったよな」
松村「ああ、そうだとも」
後藤「お前の下の名前、まだ聴いたことなかったよな。死ぬ前に教えてくれねえか」
松村「バカ野郎、俺たちはチンピラのキャラやってるんだぞ、忘れたのか。俺たちには苗字しかねえ」
後藤「ハス役が辛ーってこのことかよ」
松村「また明日があるさ。明日が来ない今日はない」
自動車事故の炎、立ち昇る煙は夕焼けを蜃気楼させる。画面が消える。
☆藤崎理髪店 Int.
藤崎はテレビを消した。そしてソファに座りリモコンをテーブルに置いて、新聞を読みだす。
藤崎「あんな映画みたことない」
理髪店の外側、商店街の人々がバク転するふたり組になぎ倒されて悲鳴をあげている。
ふたり組になぎ倒されて悲鳴をあげている。
それにしても3人は多作だな。幅広く実験的なこともやっている。この作品は分からないけれど、スパイクリーはコロンビアで教えている手前、アメリカ映画の型からはみ出すものはよしとしないのだろうか、その型内でエクスペリメンタルをしているかのよう(或いは、作品によって使い分けているのか)。ソダ―バーグとリンクレイターの方が、型といった意味からははみ出しているメソッドかのようにもある。
ログインしてコメントを確認・投稿する