バイスおもしろかった。中国は一帯一路へ、ロシアはパイプラインへと向かおうとしている。そしてフロンティア、アメリカはアフガンでどこに向かおうとしていたのか。エンドロールの、ウェストサイドストーリーのアメリカはスピルバーグへの橋渡しか。そこにはルアーが表されていた。そして劇中、蠢く魚が常に表されていたが、あれは獲物のことなのか、それとも蠢く生命か。イマヘイなセンスが出ている。チェイニーの心臓もまた蠢いていた。最初の方、アメリカの権力を世界に晒しめなければばならない、とチェイニーが言うが、なんだかピカレスクロマンのようなワクワクも表され、その手腕をもって権力を握るバイスが表され、そして途方に暮れるアメリカが表される。胸にすっぽり空洞の空いたチェイニーが表される。新しい心臓が入れられる。なかなか死なないバイス。生命欲が蠢く。テレビのインタビュー、彼は選ばれ、そして彼がアメリカであることを我々に向かって主張する。厚顔無恥ではなく、彼がアメリカなのである。議論は続き、そこに参加しているひとりの女性は今度のワイルドスピードもクールだと隣人に話しかける。
バイスとマネーショートのDP、どちらも違う人だけれど、どちらもキャスリンビグローのやった人なんだね。前者はゼロダークサーティ、そして後者はハートロッカー。どちらも未見である。ノンポリだけれど、なんだかどちらも観たくなってきた。編集はマッケイのどちらの作品も同じ人。でも、マネーショートはシニカルなポップアートの様相を表していたけれど、バイスはコヤニスカッツィみたいなセンス。懐かしさと未来の羅列であり、結論を下すマネーショートとは違って、問題提起を差延させていく。
Ps
バイスのファーストレイディーが、妻である彼女自身の彼に向けた欲求を叱咤激励的に言ったあとオープニング・クレディットに入ったり、或いはバイスがバイスプレジデントの執務室に入るとき夫人や家族とのやり取りがフラッシュバックされるけれど、アメリカ映画ではよく描かれながらもやはり、一市民が国家元首(チェイニーは阿保ブッシュを動かすフィクサーである)になること、一家庭人がアメリカというイデオロギーとリンクすること、その開け方はポジティヴにおもしろかった。アメリカという生活世界がそこにある。
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