最終日ギリギリ間に合った。
スパイの妻、おみごとだった。おみごとというセリフがやはり印象に残るものでもあった。冒頭の捕物、次のふたりの男の腹の探り合い、そして映画の中の聡子。シークエンス群がそうして繋がる。エスタブリッシュ・シークエンスに友愛を失った日本が表される。と同時に、信じていいのか信じたら危ういのか、そうした関係性もまた表されている。それは福原優作を津村が訪れる次のシークエンスにも同様に表されるものであろう。そして聡子が表される映画。映画は霊を顕すもの。魂が刻印されている(満州の映像はそのこと悟らせる)。サスペンスは冒頭からサスペンションされる。愛がない世界は戦時下の帝国に表されるが、曇った眼では見えない愛もまたそこには表される。手すりの向こう、階下にいる聡子に象徴される前半の彼女が纏う不安。そして金庫の中身を見て帰ってくる、手すりの向こう、階下にいる優作からの後半。チェスのインサート、チェスの洒落っ気は黒沢ではない濱口野原両氏のどちらかのアイデアだろう。愛がない世界や疑いは世界のクロサワらしくとも、ホン自体が黒沢離れをしている。サスペンスは後半もまた続く。オーディエンスかクリティックか誰か忘れたが、バロック・オペラのようだったと言っていたけれど、なるほどと頷ける。お見事だった。
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