mixiユーザー(id:2566286)

2017年09月01日23:24

120 view

女ざかり


『女ざかり』
 大量のグリッド、その後の岩井俊二などでもはや今は慣れてしまったけれど、かつてこの作品を観たときは、そのショットの数、カットがドンドコ変わりまくることにヘンな違和感あったし、ワイプなどの使用等にあまりにも大林的ポップの過剰を感じてしまったりと、大人を描いている映画にしてもサユリ映画にしても落ち着きがなくヘンであり、大変なヘンを感じた記憶がある。その後サユリは大林組に参加していないと思うが、オファーがあっても、大林はサユリから、私じゃなくても先生、いいんじゃなくって?と言われて断られてしまっているのではと危惧する出来上がりの印象をずっと記憶にとどめるばかりであった。けれど、今回ひさしぶりに観ると、おもしろい作品であるなとも、女性性を考えるサユリの要望にも応えられているなとも、その後には吉永小百合はこうした作品には出ていないと思うが彼女の新しい面をも引き出している作品にも思えてくるのである。
 大学院をもうすぐ卒業する娘を持つ母親像を、サユリはその年相応に表現している。ネオレアリスモ的にあるがままが表されている。素顔の現代人としての彼女が、知らない女性像ではない身近な女性像に思えてくる。彼女の娘である藤谷美紀は、彼女と同じように両目元と両頬の間にそれぞれライン(皺)があり、本当の母子のように見える。美しい母娘、されど、主人公の娘も、そして主人公の伯母である月岡夢路も、等身大の女性あらわすサユリと違って、大林的に幻影的な謎を放っている。終盤、謎で未知なる松坂慶子が吉永小百合の合わせ鏡のように登場するが、娘と伯母はちょうどサユリとケイコの合わせ鏡の間に生きているかのような人物像として表されている。サユリの人を惹きつける人なつっこい太陽と、ケイコのミステリアスな月が、藤谷と月岡にも表されているのである。生真面目で、柔らかくもハッキリと自分の意見が言える意思と、愛の水中花が主人公の娘と伯母に混ざり合っている。
 二つの側面、真逆に生きるサユリとケイコ。しかしながら、彼女たちは合わせ鏡なのでもある。サユリはヒトを受け入れる柔軟性をもっているのだが、愛の水中花の合わせ鏡である彼女にも不思議さがちゃんと表されている。三国連太郎を夢中にさせる彼女には、意志と優しさと、そして不思議ちゃんがちゃんと備わっている。三国はアクビをする彼女を蕾が咲く花にたとえる。女性はいつも不思議な生き物なのである。
 サユリ演じる女性記者が追う謎を通して、最近でも話題になっているスキャンダル、即ちメディアの政府へのおべっかや政府と繋がる宗教団体といったナウい問題も水面下から浮かび上がってくる。しかしながら、主人公と我々が追う謎のベースにあるものは、メディアの姿勢をただすものでもなく、彼女にふりかかった事件の首謀者を探る謎なぞでもなく、女性性の謎を追う物語としての謎である。合わせ鏡にそれが見えてくる。謎が解明される。サユリはケイコとようやく出会う。女ざかりに花が咲くのはきっと、その時なのである。なるほど、その時なのである。いつでも夢を見ている彼女は、凛々しく生きている。
 百合の花は決して咲き乱れることはない。私的に、サユリを津川雅彦に会わせたらいけないと思った。津川は悪い男のイメージがあるからである。けれど、彼女は渡辺淳一的なエロ津川といても、決して乱れることはない。彼女には秩序が保たれている。凛々しさは変わることなく保たれるのである。彼女と対峙する津川も、渡辺淳一的イヤらしさを表しながらも、伊丹十三的スットコドッコイ表しながらも、落ち着いていて頼れる大人として魅力を放っている。山崎努や岸辺一徳、或いは片岡鶴太郎のモンスターが百鬼夜行する世界で、彼は落ち着きを彼女に与えてくれる。凛々しく咲く花がそう願うから、そうであるのだ。津川のエスコートが素敵である。そして、三国連太郎。彼は彼らしい野獣ぶりを発揮しながら、同時に、大林的な少年像をも表してくれる。敏腕記者である彼はサユリを純粋に見つめ、謎を解きたいかのように心をゆらす。彼は純粋に恋をしているのである。オトコざかりが津川とは違った形で表される。様々なキャスト、テクニックが入り交わり、大量のグリッドは重なり合って、宇宙を創る。百合の花を求心力にして、世界は秩序立てられる。大林宣彦は山田洋次と同じように、吉永小百合の個性を大事にして花を育ませていたのである。そのこと心に届けられる。以前に感じたような奇をてらった感覚なくなり今回、意外な小宇宙を生む素敵な作品という印象に変化する。




1 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2017年09月>
日 月 火 水 木 金 土
     12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930

最近の日記

もっと見る