『彼は秘密の女ともだち』
ローラの死を受け入れることができないふたりは、別々の形でローラを内在する。死を引きずるメランコリア、されどそこには虚実を超えたホントの感情の芽生えが生まれていくドラマがある。
クレールの驚く表情がそのクロースショット、3回表わされる。まず、ダヴィッドとローラの出逢いを見るクレール、次は電車で見つけるローラに似た女性を見る彼女、そしてダヴィッドの復活をアメイジンググレースするクレールである。ダヴィッドの目覚めよりも、フェミニストであるオゾンはクレールの目覚めにより関心を持ち、そして我々に持たせようとする(彼のテクストでは常に、女性の覚醒に主眼がおかれる)。他者を通じてホントの芽生えが誕生する。ローラの死とリュシーの誕生はその発芽となる。芽生えはまずダヴィッドに生まれ、そして他者の姿にクレールは自身の姿を見つける。自信なげな彼女に見えても、そのホスピタリティは、ローラの髪をとぐ彼女に表わされるように、身近にある生の姿。
オゾンは感情の芽生えを丁寧に追う。我々の心もムーヴする。クラブのシークエンスで、ヴィルジニアが音楽に感涙する。オゾンは感情の芽生えを、じっと捉える。
ヴィルジニアの虚実のない様が表わされる。オゾンはいつも彼が表わすように、人間の素直な真実を表わす。私は女よ、と感情の吐露がなされるメールの後の悲劇、それは再生へと向かう徴となる。
7年後のラストシークエンス、ジルはいないけれど、クレールが彼と別れたかどうかは分からない。4人で一緒に暮らしているのかもしれない。ただ、ヴィルジニアとクレールは再生のなかに育まれているものが、歩いていく3人の後ろ姿のラストショットに悟らせられる。
ホントの関係が在る。誕生がある。芽生えるそれは壊れたものから育まれるのである。表象はオゾンから消えないけれど、少なくともそれは、代理としてのそれではない。
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