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2026年09月21日10:31

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ジャッキー・ブラウン


☆『ジャッキー・ブラウン』(Jackie Brown 1997; クエンティン・タランティーノ) 

 *ロサンゼルスが舞台である。タフガイのハードボイルド★ムーヴィーである。フィルム・ノワール的に言えば、主人公自身がファム・ファタールとなろう。3人の男たちを手玉に取るセンスである。ブリジット・フォンダのメラニーも男を手玉にとるが、やり方がビッチのせいかあーなってしまう、

 *現代はハイパーリアルである。現実を表現する(つまり現実をイメージされて創作された)イメージが現実に取って代わっている。もはやこの現代、シミュラークル(=オリジナルがなくコピーばかりの構造)している。たとえばラスベガスのピラミッドやディズニーランドのアトラクションワールドなど。そしてロサンゼルス。ロサンゼルスはタランティーノの再帰性をもたらすテクストと相性がいい。(再帰性とはその構造のなかで自身を参照する働きを言う。映画で言うなら「この映画は、自分が映画であることをわざと見せる」。) されどタラちゃん、そうしたハイパーリアルにおいても、人間臭さを醸し出すことは忘れない。シミュラークルの大都市、しかしヒトはそこに生きている。

 *『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』のデカプリオはスランプ状態のアクター演じているけど、タラちゃんが描く登場人物はなにかしらの窮地に陥っている状況に直面しているのが多いよね。本作の主人公ジャッキー・ブラウンも生活苦など窮地に陥いっている状態である。でも、だからこそ悲哀がにじみ出てハードボイルドのフィルム・ノワールにはフィットする(でも彼女は堂々としている。ディカプリオは悲観にくれる姿を見せるがジャッキーはクールである。スターでありながらも演技派でもあるディカプリオをキャストした理由もそこにあるのだろうし、一方、パム・グリアをジャッキーにキャストした理由もそこにあるだろう)。元亭主のおかげで逮捕歴があるから一流ではない航空会社に転職になってしまい年金も雀の涙のスチュワーデス(アメリカではCAとは言わないのかな)するジャッキー・ブラウンが生活苦のなか悪事に手を出す。ギリギリの状態にいる主人公である。

 *窮地に陥ってる主人公であるも、そんな生活から抜け出すべく一攫千金、ストリートスマートになるプロセスがハードボイルドに描かれる。最初の方は警察の罠にはまったりするが、そもそもスマートなのだろう、ポリスもギャングも出し抜いていく。

 *現在はアメリカ人でもアメリカにアメリカン・ドリームがあるなんて感じられないと思うのが大半のようであり、不動産の値上がり、住宅ローンや奨学金ローンやあれこれストレスの時代。20年も前の作品であるが、窮地の状態で夢見るアメリカンじゃいられないアメリカンにとって本作は常に身近に感じられる作品ではなかろうか。そしてラストのゴールデン・ディッガーもまた、そうだからこそ、現在でもアメリカンの心をくすぐるのではなかろうか。

 *原作があって原作者は「ゲット・ショーティ」も映画化されているエルモア・レナードであり、彼の小説「ラム・パンチ」の映画化が本作品。でも本映画作品では、主人公の白人女性をブラック・アメリカンの女性に変更となっている。マイノリティのイシューを表すというよりも、タラちゃんが好きであろうブラックスプロイテーション映画のオマージュ的な意味合いがあるのだろう。じっさい、主人公ジャッキー・ブラウンを体現化するパム・グリアはブラックスプロイテーション映画のミューズであり70年代一世風靡したという。たぶん、こうした作品などがグラインドハウスで上映されていたのであろう。ジャッキー・ブラウンの雄姿カッコよい。タラちゃんはあらゆるB級映画を世に知らしめる。彼は修業時代はレンタル屋で店員として働き、知識を得ると同時に(働く前からたくさんB級映画を見まくっていたであろうけれど)、客に知らしめるべくB級映画の普及活動をしていたであろう。ジャッキーのパートナーとなる男性を演じるのも多くのB級映画でヒーローを演じていたロバート・フォスター。されど、オマージュはあれどまんまB級にはせず格式あるドラマにするのがタラちゃん流。

 *タラちゃんは物語る。時間軸や引用が取沙汰されるが、彼はちゃんとドラマを描けるのである。デビュー作『レザボア・ドッグス』が評判をとるけど、そこで彼はおもしろいホンを書く脚本家としても脚光を浴びる。彼のホンによる、トニー・スコットの『トゥルー・ロマンス』やオリバー・ストーンの『ナチュラル・ボーン・キラーズ』(後者は監督オリバー・ストーンが大幅に変えたらしいが)もまた話題になり、同時期に脚本・監督の第2作『パルプ・フィクション』がカンヌでパルムドールを受賞すると同時に世界で大ヒット、タランティーノの時代が到来する。娯楽しレトロし登場人物たちはよく喋る。よく喋るのはタランティーノとて同じであり、心理のキャッチボールが彼の饒舌と同じように彼のテクスト、おしゃべりされる。タラちゃんは物語っている。





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