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2026年04月18日10:19

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『ディーパンの闘い』(Dheepan 2015;ジャック・オーディアール)覚え書き


*レオスカラックスやギャスパーノエはフランスではアートシアター系ではニッチな存在というほどまではないけれど傍流でありながらも日本でほぼほぼ公開され、フランスではアートシアター系でもメインストリームなアルノ―デプレシャンやオリヴィエアサイヤスやジャックオーディアールやクレールドゥニよりも知名度があるように思えるけれど(いや、オーディアールは他の3人よりはフランソワオゾンなみに、或いはそれ以上に知名度はあるかな)、今回はちょいとメインストリームを責めてみようか、となり、アサイヤスは『冷たい水』や『イルマ・ヴェップ』は観てるけれど最近の誉れ高い作品『夏時間の庭』や『アクトレス〜女たちの舞台〜』は未見だから観たいな、となり、デプレシャンも『そして僕は恋をする』や『キングス&クイーン』は観ていてもその後の誉れ高い『クリスマス・ストーリー』や『あの頃エッフェル塔の下で』は未見だから観たいな、となり、ドゥニのは『ネネットとボニ』や『美しき仕事』は観れているが、かなりにかなりに誉れ高い『35杯のラムショット』は日本では観る術すら分からない、、配信にはあるのかな、ユーネクストだったっけかな、フランス映画はまあまあ観れるとフランス人が言っていたっけ、で、オーディアールのはけっこう観れるみたい、アメリカでの公開も多いこの映画作家、これまで出会ったヒトでふたりぐらい一番好きな映画を『真夜中のピアニスト』だと言っていたし、また、誉れ高い『予言者』や『ディーパンの闘い』なんかもオーディアールのでは観てみたい。と思っていたら『ディーパンの闘い』、手元にあった。レンタル落ちでかなり前に購入していたのである。

*作業をよくしているカフェにスリランカ人の女性がふたりいるのだけれど、スリランカでのタミル人の問題を知るという点では、本作品なるほど、そうした過酷なイシューだ、となる。ここ何年か取り上げられるミャンマーやバンクラデッシュのロヒンギャの問題がいま目立つけれど、タミル人の問題は関心の外になってしまっていた。蚊帳の外ないし対岸の火事に見てしまっているのあるが、世界中いまや憎しみの連鎖、それを考慮するうえでたしかにこのイシューが存在することを意識せねば、となる。

*作品自体はラストは主人公の野生の爆発ドンパチとかっこよかったけれど、オーディアールは今まで観たので『君と歩く世界』はレモン色とマリンブルーの印象の残滓が残っている、なにかただのヒューマニズム作品だったという感覚、で、『エミリア・ペレス』は表層は奇異なる人物たちと彼女らの奇異なる運命であるが中身はただのヒューマニズムの印象で作品的になにを伝えたいのがよく分からず。本作品もやはり結局はただただヒューマニズムなセンスの印象。たぶん、オーディアールのテクストってストラクチャー的に多分にアメリカ映画の要素があり、そこがフランス映画の傍流であるカラックスやノエ、またはデュモンとはもちろん違いがあり、アートシアター系であってもメインストリームのアルノ―デプレシャンとオリヴィエアサイヤスとも隔たりがあるように思える。物語を追ってその中で主要人物の動向を追いともすれば同一化してしまうアメリカ映画と違って、フランス映画はシアター内、その暗闇のなかで主要人物−特に主人公―に寄り添いともすれば同一化し喜びや不安を共有する体験空間的なところがあるらしい(そういうところが物語ないしあらすじを追うアメリカ映画との差異がある)が、そうした部分はオーディアールにはあっても、物語空間的にはアメリカ映画を意識したようなストラクチャーのような気がする。なにかフランス映画とアメリカ映画のミックスのようなセンス。だから、アメリカ映画のなにかで観たような感じになりオーディアールにはすかされるところがある。でもって、だからアサイヤスやデプレシャン、はたまたクレールドゥニよりもアメリカでのウケがよいのかも。本作品『ディーパンの闘い』は移民の過酷な現状がイシューされながらもフィルムノワールな要素がエンタメ的にあり、ともすれば『タクシードライバー』にも見えてくる救済の在り方が遂には表される。

*でも、アメリカでは移民もエスノ音楽も”アメリカ”というトポスに吸収されてしまう―いまアメリカの音楽でアイデンティティをどうにか保っているのはバッドバニーらプエルトリカン勢ぐらいのような気がする―のに対し、フランスはその共和政のもと、スカーフが禁止のようなライシテはあっても、ケシシュの作品や本作品を観ればおのおのエスノの文化はそのアイデンティティは保たれているように思え、たぶんアフリカが近いし行き来するヒトらも多いからか、インディーズではなくメインのヒットチャートにあがってくる曲がアフリカン色が強いのはそのせいでもあるのかな、フランス自体がそれぞれの文化を共有することができるからかな、となる。本作品もスリランカを前面に出していて、それが逆にフランスらしさを出しているような気もする。

*スリランカも暴力にまみれ、そこから亡命した先のフランスもまた同じであり、祖国で暴力によって妻子をなくした主人公はそこで生まれた”ファミリー”を守ろうとする。その救済の在り方自体が主人公自身の救済となる。内容的にタクシードライバーしているけれど、エスプリ―精神―を確かに感じさせてくれる作品ではある。


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