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2026年02月25日16:24

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『ホーリー・モーターズ』覚え書き


*『ホーリー・モーターズ』(Holy Motors 2012)購入したので観る。おもしろかった。ジョンウォーターズはいつも毎年の映画ベストテンには、ハーモニーコリンとギャスパーノエとレオスカラックスとフランソワオゾンが新作を出したら上位に置くのだけれど、本作品はその年のベストテンには選出されなかった。本作品はあちこちの映画祭で絶賛を浴びカラックスにとってはそれまで以上に世界に名を知らしめる契機となったのであるが、エッセイ・スタイルの本作品はウォーターズにはちょいとスマシタ作品に思えたのかな?私的には公開当時は日本ではカラックスは特に人気があるからということも手伝ってか、猫も杓子もハイル!ホーリーモーターズ!なところあったからこっちは冷めて距離を置いていたけれど、実のところ、エッセイ・スタイルをとる本作品がやはりカラックスでは一番好きなのかもしれないな、となる。おもしろい。

*エッセイだけれど、自身のこと多くは語らないカラックスにおいて内面の吐露というものではなく、少なくとも、彼の本名である彼自身、アレックスデュポンのそれではないだろう、だけれど、映画の告白、シネマ内面の吐露であり、映画 イコール カラックス、アレックスデュポンが自身の名前をアナグラムに変形させた、それすなわちレオスカラックスならば、シネマ.の告白、レオスカラックスの告白だとは言える。

*映画、それはすなわち、モーター、マシーン、そしてテクニークであり、そこにはカメラ、映写機、アクト、メイク、大道具、SFX、そしてシネマには必要不可欠なオーディエンスと様々なものが集約されているのであり、映画そのもの、すなわちムーヴィーとはその性格を言うのであり稼動なのである。ムーヴには「動く」とI’m movedから分かるように「感動」の意がある。ムーヴィーはそれらを総合した意味。心を届ける。映画には心があるのである。

*本作品は映画の内側をあばくような構造映画のふしもあるけれど、それよりもなによりも、劇映画らしくムーヴを届ける。映画の原風景への回帰であろうか、ところどころクラシックな映像。エティエンヌ=ジュール・マレーの写真銃で撮られたであろうクラシカル映像で1フレームを、そして動きをアピール。ニッケルオデオンの時代から存在するキスキスバンバン、すなわちファムファタールやヌーディティといったエロス、そしてギャングものやウェスタンにおける拳銃によるヴァイオレンスがあれば大衆は劇場に集まる、そうした約束事の擬音の表現でありそのうちのひとつ、バンッが鳴り、映画冒頭に目が覚めるカラックス自身はシネマの裏側に入ってゆく。夢は続いている。そこから現代のロンチャイニーでありカラックスのペルソナたるドニラヴァンの変幻自在なアクトがはじまる。物乞いの老女は人間と現代欧羅巴が対峙する縮図を表すのか、都市と人間の関係、或いは、ロザリンドクラウスが言うアンフォルムの体現か。その後の様々なエピソード、モーションキャプチャーによるエロドラマから最後のメロドラマまで、構造分析を試みながらのそれ自体がドラマとなりキスキスバンバンあり、フィルムノワールあり、男女や父と娘の絆のドラマあり、メルドの逆襲あり、と官能とアクションを魅き出す。堕落した聖がヒカリを導き巴里が奏でられる。ノエのテクストと同じようにカラックスのそれもまたそうであり、本作品もまた音楽だ。音や音楽だけではなく、映像を含めた本作品自体がまるで音楽のように奏でられる。

*カイリーミノーグがWho are we?と歌う歌、クラシカルな響きゆえシャンソンのスタンダードなのかな、と思うも、本作のオリジナルなんだね。そのフレーズは特に前半最初の方のエピソードいくつかでも短くも聴こえてくる。カイリーがオスカーにどこかに隠れていたの?と尋ねるが、オスカーはどこにも隠れていないと応える。アクターは匿名性であり変化であり、アイデンティティを持たない。それ自体がアクターのアイデンティティとなる。映画の登場人物たちはスクリーンにイメージとして刻み付けられ、その傷が哀しさとともに生となる。シネマはヒカリを届けるモーター、人間の普遍性を届けている。心を届けているのである。ホーリー・モーターズ、、、

 *映画の引用がちりばめられ全編を紡ぎ、ビリーワイルダーは『サンセット大通り』から拝借したアイデアのリムジンたちの会話やエディットスコブに名声を与えた『顔のない眼』のマスクはシネマの記憶を呼び起こし、本作品は幕を閉じる。されど、いや、だからか、シネマは稼動し続ける。記憶がそこにある。我々の日常のなか、そのコンテクスト、シネマは織り成されるのである。







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