『天国と地獄』
エド・マクベインが原作だからか、金の亡者が真人間になるのは、アメリカン映画の典型の如くであり、アメリカンにもウケるのは必至。悪い奴ほどのクラく過去ある男の三船より、土下座されることを嫌い豪快にして人間味をやがて見せる三船の方が三船に合っている。アメリカンもきっと大喜びのはずである。木村功の久しぶりの登場も、アメリカンはビッグエンジョイだ。クロサワ自身が彼の野良犬をオマージュしている。その証として、木村はチンピラ姿も披露するではないか。野良犬の刑事たちと同じように、捜査班は犯人を追い詰めていく。過去に一回観た時は、なんかダラダラとした印象を持ったが、今回はずっと見入ってしまった。黒澤のサスペンスの集大成である。会社の役員たちとの話し合いの冒頭、その後の主人公の画策、そこから緊張はずっと続く。
リンチやオゾン、ハネケのようにラビリンスに導くのではなく、クロサワもイマヘイも、映画とはテロップにおいてもセリフにおいてもオーディエンスにはっきり分からせる、それが映画の基本のキの字であると言わんばかりであるが、この作品では捜査班の刑事たちの報告や記者会見、どれもこれも観客にやや説明している感じもするが、それもこれも世界のクロサワであり、それがあってこそのクロサワなのだろう。されど、ラストの山崎努の告白、後味悪いものにも感じるが、あそこにもまた黒澤の社会へのシンパシーが表されているのである。山崎努、やはり上手かったなぁ。
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