『バーバー』
物言わぬ、というより、物事をそこまで言えないヒトはいる。存在しているようで存在できぬ、その事情、男はまわりからその存在が気付かれないままに生き、マクロに見ることができぬままミクロに生き、イメージを探し求めキャピタリズムに生き、死んでいることを気付かず、そして何よりモダニティという贖罪を抱えながら生きている。主人公のことだけを言っているわけではない。あそこにいなかった男とは、湖の底で漂いながら死んでいる、あの男のことも表しているのである。現代人は偶然を転がるように生きている。偶然にはいつもイリュージョンが映し出されている。そして幻影には、物事は決して言われないままなのである。彷徨したあげく眼は開かれる。或いは、現代人は彷徨をそのマナコで見惚れるしかない。
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