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2020年01月27日23:25

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映画日記 『玄海灘は知っている』

2020年1月27日(月)

『玄海灘は知っている』(1961年)
監督:キム・ギヨン
駅西・シネマスコーレ

冒頭に「1944年 名古屋」と出る。
名古屋人としては、ちょっとびっくり。

ときは戦中、志願兵として名古屋の部隊に配属された朝鮮人学徒兵のア・ロウンが主人公。
入隊早々、古参兵たちから目の敵にされ、ビンタと鉄拳に、軍靴の底についた糞をなめさせられるという屈辱的な制裁の日々が始まった。
『真空地帯』(1952年)や『人間の条件』(1959〜61年)のような反戦映画であり、かつ反日の映画かとおもったら、ロウン青年は日本人女性の秀子さんと熱愛になってしまう。
戦争を背景にしたメロドラマかとおもったら、終盤は怒濤の展開だった。
ロウンを苛めていた古参兵が、前線行きを逃れるために画策した姑息な手段と、その皮肉な結末あたりから、異様に盛りあがっていく。
そして、クライマックスの名古屋大空襲だ。
軍が焼却しようと集めた、おびただしい死体の中から、ロウンが死んでたまるかとむっくりと起き上がった。
その姿を見た群衆が、家族や愛する人がまだ生きているのではと、柵を押し倒して死体の山に殺到する。
そのラストシーンに、一種異様な感情が湧き起こった。
その感情が、反日とか反戦とかいった決まり文句でないことは確かなのだが、なんと表現したらよいのか分からないのが、口惜しい限り。

ところで、本作の舞台が名古屋ということで、名古屋城にビルの建ち並ぶ繁華街が画面に登場する。
名古屋城はなんとも言えないが、繁華街のビルのひとつが、かつて名古屋駅前にあった毎日ビルだった。
毎日ビルは隣接した豊田ビルといっしょに再開発され、いまはシネコンのミッドランドスクエアシネマが入っている高層ビルになった。
帰宅してネットで検索したら、毎日ビルが竣工したのは戦後の1953年のことだった。
つまり、製作当時の名古屋の風景を、戦中の名古屋として使っていることになる。
『惑星ソラリス』では、未来都市の姿として、当時の東京の首都高が登場する。
その逆バージョンだ。
その毎日ビルには映画館もあって、学生の頃よく通った。
もうひとつ大鳥居も登場するが、あれは秀吉を祀る豊国神社の参道に建つもので、家の近所だ。
妙なところで、なじみの風景に出会って、なんだか得した気分。


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