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2020年06月25日23:58

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映画日記『横堀川』

2020年6月25日(木)

『横堀川』(1966年)
監督:大庭秀雄
岐阜柳ヶ瀬・ロイヤル劇場

ときは明治か大正の頃。
大阪は船場の大店の娘・タカ(倍賞千恵子)が嫁ぐ日、父親(佐々木孝丸)が母親の形見として、白無垢の喪服を手渡した。
商家の妻というものは、夫に先立たれたときには白無垢の喪服を着て、生涯他の男に身をゆだねることはないと誓うのだという。
タカが嫁いだのは呉服店だった。
働き者で商才にたけたタカはたちまち店を切り盛りし、舅(明石潮)も大喜びだった。
しかし、夫の吉三郎(中村扇雀)は面白くない。
どうがんばっても、タカの商才にはかなわないうえに、もともと商家には向いてない性分でもあり、芸人のガマグチ(小沢昭一)を従えて、毎夜茶屋遊びに出かけていた。
ところが、舅が急死したことがきっかけで店は傾き出した。
そのうえ、苦労ばかりのタカを喜ばせようと、吉三郎が一攫千金を夢見て株に手を出してしまう。もちろん残ったのは借金だけだ。
しかし、タカはそんな吉三郎に愛想が尽きることはなかった。
そんなに商人仕事が嫌なら、吉三郎に好きな芸事の仕事をさせようとする。
なけなしの金でオンボロの寄席小屋を買い取り、ガマグチの協力を得て開業の準備をはじめる。
気づくと裏庭で吉三郎が呼び込みの練習を始めているではないか。
ここでもタカの商才とがんばりが運を呼びこみ、寄席小屋を増やすことができた。
タカは夫の吉三郎を大阪一の席亭にすると、日夜いそがしくかけずり回る。
そんなタカがまぶしいのか、吉三郎はふたたび家を空けるようになる。
そして、ある夜、妾宅でぽっくりと死んでしまった。
葬儀の列の中に、白い喪服を着たタカの姿があった。
吉三郎の死後も、タカは寄席の仕事に邁進する。
いまとなっては、寄席の仕事が生きがいだった。
そんな彼女に、伊藤(田村高廣)という市会議員が好意を寄せるようになる。
寄席小屋でどじょうすくいの安来節を掛けようと、演者を求めて出向いた出雲で、タカは偶然に伊藤と出会う。
その夜、からだが火照るのか、タカは寝付かれなかった。
しかし、彼女は白い喪服に袖を通した身なのだった。
タカの狙いどおり、安来節は大人気となった。
熱狂した客が踊り出す。
その様子を伊藤が二階席から見下ろしていた。
そのことを知ったうえで、タカは意を決して踊りの輪の中に入っていく。
はじめはうつむき加減だったタカが、しだいにあごを上げ、「わたしが生きていくのは、ここなのよ!!」とばかりに、観客といっしょに踊るのだった・・・・

よく、役者は芝居を通じて他人の人生を生きるようなもの、と言われる。
本作を見てたら、観客のほうも、1時間半あまりで自分の人生とはまったく違う人生をたどるという体験をしているのだと、あらためておもった。
がむしゃらに働いて仕事に成功しても、ほんとうに欲しかったものは、手に入らなかった、というあらすじは、『市民ケーン』みたいだ。
とにかく、2〜3時間かかってもおかしくない内容を1時間半あまりに、ビシッとおさめた手腕はすごいとおもう。
珍しく長いあらすじ紹介になったが、ストーリーのポイントを的確におさえて撮っているせいか、ちゃんと覚えていた。

若き日の桂枝雀が登場したのには驚いた。
なにしろ、髪の毛がふさふさだった。

佳作。




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