高千穂の神楽の帰りむささびの飛びたるを見て星かがやけり 花みちる色失せにけりうつり季の神無月去り冬しのび寄り 乳垂る川 神社に沿いて太鼓橋掛かる紅葉を水に流して 叔父さんの「また来っけん 兄ちゃん」と父の遺影に声をかけ笑む
女がショッピングカートにつかまって足を片方ずつ前に運んですすんでいるが、その後ろで、後ろ手にカートを引いている女は、前の女に追いつくか、というところで立ち止まり、こぶしを腰に回して、今、ゆっくり伸びをした。国道沿いの午前中のスーパーでは、老
混沌という誰もが使いたがる言葉を手にとって、さて別の言葉があるだろうかと雑然とした頭の空間をもぐりながら騒然という言葉に手をのばす騒然の中にも混沌はあって、と思いながらでんぐり返る何が何だかわからない景色はもやもやとして何かが見えるような見
焦げくさい咳が出る後頭部からの神経が首を刺している昨日の女医はかろやかに「弱い風邪ですねー」と語尾をのばした[安心]と[そんな雑魚に荒らされるほど俺は弱っているのかという無念]の二つが乗っかった天秤の上の方で女医は俺をにこやかに見下ろしてく
進路を誘導する矢印のむこう警備のおじさんは生きている案山子第一車線で大きな旗を振ってときどき旗を持ちかえて茶色い車のおばさんは赤い旗をさけ車線をかえる他ない直進車は我が道なりとゆずらない鉄のカタマリは途切れず向こうの信号まで繋がっているトラ
僕の片方の空っぽが気付いた時には大きくなっていてアイドルのポスターやCDを沢山放りこんでも丸にならない長い髪の彼女は半分の月空っぽが半分を呼んでいる僕と彼女が合わされば丸くなってきれいな望む月になる僕は生まれてからこれまでの光を長い長い手紙に
君、本当に愛しているのか自分に問いたまえ他人に問う愛ならばそれは未だ問うほどの愛を超えていない君、私が他人の愛を知っていると思うか自分の愛さえ分からぬ者が他人の愛を語れようか君、ただ、愛する者に精一杯の愛をそそぎたまえ生きる限り愛が渇れるこ
陰をつたって獲物を狙っている者なに食わぬ顔で街はゆき過ぎる片隅にとり残された兵士の人形は日が沈めば存在さえ消されてしまう顔に残された少年の指紋は永遠の時の途中をさまよい続ける野良猫は身構えるが闇に光るふたつの煌きは脱走したパチンコの玉である
どこでも同じ塩素の匂いただ両耳を圧迫する騒然のリズム隣の逆三角形どもがやるように骨に垂れさがった筋肉を意味もなくゆらしながら何事かにシランぷりをきめ白い時間を待ちつぶす有無を言わせない掛け声が静かにみじかく発せられるカカトから骨を伝わる振動
すりガラスなめる雫の形状につらなり映る青い裂傷 窓を開け煙にがした引き換えに押し入ってくる金曜の街 陽当たりにカフカの短歌詠まむとすiPhone落ちて居眠りの覚む 父が席 あけてならじと我れ座せり団欒スープ 出汁は引きうく 隧道の微
出逢った瞬間から引かれ合い近づくほど強く合わさった時は一個の物であるかのようにただ二つにはそれぞれにシールドがありある時、その間がこじ開けられ二つは離れてしまう裏返され離れていく一つに対しもう一方は別の方向へ遠ざかる力を無くした一方はやがて
おお、我が一世一代の告白劇が其処にいる筈もない男に何と、見られていたとは!私は胸を締めつけられる思いのさなか天国と地獄を分ける鋭い尾根を一足ごとに地を確かめながら渡っていった万里にも思える道のりを進んで来た体はすでにズタズタになり谷底へと落
真夜中ぼくは詩人になる体の肋骨の奥でざわめいていたたくさんの小さくて読めない文字が柔らかいトンネルから運びだされて頭のミソにとどいた時虫メガネで大きくなるように白い紙に少しずつ映りこんでまるで景色が現れるように空のまばらな雲は集まってもっと
【死】辻ばたのアスファルト割り突き出でて百合花咲いて根もとで倒る なにもないということがそこにあり なにかがそこでうまれでている 見えなくて恐れる事が今あって何も無ければ恐れない筈が あの人が死んでしまったその後は死んでいるのです ま
雲は集まっているから雲と呼ばれるのでその時が来て散り散りになってしまえば雲と呼ばれなくなる目に見えなくなるなら死んでしまうことででもそこにいてただ広がっているだけなのに
広い荒野を渡り終えた回転草が砂漠から少し離れた街にたどり着く乾いた風が通りに吹きこんできている風塵にまぎれて男が街に入った服はむこうの砂漠の色と大して違いはないブーツには拍車がついているが馬のすがたはなく顔はテンガロンハットが深くてみえない
ネットに詩をのっけたり批評サイトに参加したりすると、裏でいろんなこと言われてたりするんだなぁと思った。ペンネームでググると、批評サイト(文がくごく道←もう行ってない)で私の詩に毒舌批評をした人に対して攻撃していたり、私の詩を解説していたり。過
葉音の清しい午後女王蜂は高く空を飛ぶ鳶に恋をした彼は雨が降るとしきりに忠告したのだが雀たちは雨上がりの水たまりに一列に並び番台が女湯を覗いているのを気にしていた知らぬ間に日差しはプリズムを透過し南極の氷は囀りながら溶け続けている握り拳を高く
君が居ないとダメなんだ とは言わなかったな これだと子供ちゃんだし君じゃなきゃダメなんだ と確かに言ったな 他の人じゃダメと 僕はダダをこねたわけだ君が居るとダメなんだ と仮に言って 君がいぶかしげに僕を見れば だって、ごろニャ〜ン と、も
交響曲のようなものでなくヴァイオリン曲のようなものでもない二人でいるとき一人のときに繋がった弦が少しゆるんだようなふれると指にまとわりついてん、ポロンみたいな音を立てて二人がクスッと笑ってるようなメロディーもリズムもなんとなく静かにささやか
【和歌】(月)かすみなき夜にもさやけき月なれど われなうつしそ恋うせにけり 月見れば来し方ともに眺めつつ あふを契りしかの女を覚ゆ 〔女(め)〕新月の鋭きに晒してゆく末の 命をかけたる業にいどめり 〔鋭(と)き、命(めい)、業(げふ
今日は雨が降っていて林がうすい空はカサの上学校の方から溝を流れてくる水が雨にふえていつもより大きな音を立てている黒いカサの下に交互に出る白い靴は水が入ってもうグチュグチュ言っているカサから見えてくる白線は学校を通りこして向こうの神社にまでつ
【和歌】むばたまのうしろ髪なむ遠ざかる終のゑみほど残るものなし 天つ風月にかかりし叢雲をかきて解かなむ君が黒髪 君がため何事なりとて果たせどもよにも憂き夜のねやにさす影 出逢ふとも別れは消えじ重ね着の上げたるうでも置き場みえざり
【テレビ】〜小学生好きだった『キャンディー・キャンディー』脇役のメガネ、パトリシア・オブライエン【帰省】〜小学生ねえちゃんが、必死で吐き気をこらえてた着いた途端に腹乗る弟 【母】〜中学生垂れ乳の〜、こら!変な歌やめなさい!もう父さん
【死】ただいつか生まれる前に戻るだけと言いながらも想像できない 【神】まがいもなく我を作りし父ならば母護りぬく神となるべし【月】明るっ!とフロントガラスの股越しに前かがみに見たポンと満月 ぬばたまの狭い都会の夜空から寝ぼけた月がのぞき目が
水も地もべたりと星につながれて風は鳥など飛ばして憩う 雨風は許してはいない山間のアスファルト溶けて砂利剥きだせり 鳥は一度楠をとび立ち、かえり来るなかまに気づいて翼をかえす 街路樹のタイルの歩道におとす影は背
あのケンちゃんの名前は、ユウちゃんでもショーンでもいいい顔の表情がいつもより大きく変わると(別人みたい)で〈ケンちゃんだよね?〉と訊きたくなる眉があり、目があり、鼻、口、「おばあちゃん、久しぶり〜」《どちら様ですか?》「え〜っ、ケンだよ」《
ぬばたまのをとめがまなこ隠しけるまつ毛もどかし御簾がごとくにうすずみの衣に落つるみづのかた散りてかへらじ八重さくらばなあさは冷えひるに上着をぬぎたればふと青くあり霜月のそら 我がみちを信ずと言ひてよそが山将棋くずしに音を立てたり 無垢