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2014年11月13日20:08

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詩『荒野』


広い荒野を渡り終えた回転草が
砂漠から少し離れた街にたどり着く
乾いた風が通りに吹きこんできている

風塵にまぎれて男が街に入った
服はむこうの砂漠の色と大して違いはない
ブーツには拍車がついているが
馬のすがたはなく
顔はテンガロンハットが深くてみえない

通りの中央をもの怖じなく歩くすがたに
表に出ていた者たちの目が釘づけになった
通りにしょぼくれた白い犬が出る
前を横切ろうとしたところで
男に気づき近づいていく

通りからは声が消えている
風にさらわれる砂の音
男は立ち止まって葉巻を取りだし
マッチをすって
“Hey, dog, coming ?”
低くかすれた声
犬は長年の主人に従うように
顔を見上げながらしっぽを振る
男は照りつける陽をにらむように
目を細めて顔を上げた

街を見渡す
通りの人々を確かめるような眼差しに
皆は視線をそらした
男は煙を吐きながら
ゆっくりと酒場に向かう
犬があとに続く

スウィングドアがきしんだ
店内には男たちが六人
テーブルに三人、カウンターに二人
そして店主
“Hey, barkeep, give me a drink.”
男がカウンターに座ると
間もなく男たちは席を立ち店を出て行く
“What happen?”
琥珀色が震えている
マスターは無言でグラスを置いた
が、壁の貼り紙が物語る

《 W A N T E D 》

“aha”
男がニヤリと笑うと
マスターは慌てて裏口に逃げていく
男はグラスを一気に飲みほすと
グラスでカウンターを鳴らし
銃を取り膝の上に置いた
スウィングドアがきしむ
“The man, hold up and turn around !
I 'm a Sheriff ”
聴き覚えのある鼻にかかった声
男の右目が歪み
歯を噛みしめる音
“O - K”
振り返ると同時に銃が火を噴く
戸口で倒れる音
隣の若造は早くも銃を捨て両手をあげた
犬はじっとしている
“Baby, take a dry meat ”
“What ? o, OK”
若造はカウンターの向こうにまわり
干し肉を探して男に渡した

“Hey, dog”
男は肉を犬に与え頭を撫でたあと
ゆっくり扉を出て行った




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