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2014年11月28日21:19

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詩『 INVENTION 』


混沌という誰もが使いたがる言葉を
手にとって、さて
別の言葉があるだろうかと
雑然とした頭の空間をもぐりながら
騒然という言葉に手をのばす
騒然の中にも混沌はあって、と
思いながらでんぐり返る
何が何だかわからない景色はもやもやとして
何かが見えるような見えないような

    *

眠る時は真っ暗な方がいい
滅多にない眠れない夜
遮光カーテンと窓の隙間から漏れた光が
天井に幾何学模様をうつしていて
特別めずらしい形でもないが
瞬きもせず見入ってしまう
入口にはL字型が出来ている
この文字の意味は何かと
意味もなく
集中して考える

    *

たばこを吸いながら休憩時間を潰す
駐車場の植えこみのむこうで
国道のクラクションが鳴る
工場では機械の音が続いている

    *

カンディンスキーの絵の前で
少し離れて女が対峙している
前を横切るのは一般大衆
彼女にはそんな事はどうでもいいようで
そこだけ時が止まっているかのように
まっすぐ動かずに立っている
彼女を軸にして人々が渦を巻いている
しばらくすると
絵を飲みこんで透明になったかのように
彼女は大衆にまぎれて消えた

    *

夜九時を回ったところ
店の外は往来がなくなり
強い雨が降っている
自動車は水しぶきを上げて行き過ぎる
風は横なぐりで屋根のある歩道が濡れ
街灯の光を反射させている

    *

眠れない夜もいつか途切れて夢の中
耳もとで鳴っていた心臓の音は
いつの間にか列車のシートの上で
隣の四人掛けの席から
家族連れの声が聞こえる
私は居眠りの中
あるいは
それが現実か




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