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日記一覧

短編『話にならない』
2018年11月14日11:14

『話にならない』 私はティッシュを取り、鼻をかんだつもりだったのだが、おかしなことに、自分をかんでしまったようで、私はティッシュの中に排出され、しかも厳重に、もう一枚(正確には二枚一組)追加して包まれ屑かごに捨てられてしまった。白い世界にたっ

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『鈴蘭の実』 さみしさを遡れば、哀しみの水の上で、孤独の舟に揺られ、幽かな音を立てながら降りかかる記憶にぬれる。淋しい山水画の川のほとりに寂しい染みが残っている。川も流れていれば気色は海へと還るだろうが、澱みに堕ちた、時の枯葉は止まったまま

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短編小説『夜の雫』
2018年10月26日23:24

 フロントガラスに触れた雫は、すぐそばの水滴に吸い込まれて大きくなった後、形を変えて平たくなると、自重に堪えきれず、更に下の雫と合わさって一気にフロントガラスを滑り落ちた。 黒い影が大きくなり、焦点を車外にやると、黒いワンピースを着た女性が

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『驟雨の後』
2018年10月23日19:58

『驟雨の後』 雨の上がった夜は何やら清々しく、空を舞う塵が無数の雫に払われ浄められたからなのか、休んでいた虫の音さえも透明感を増して耳に通ってくる。「土砂降りの雨の音が好き。」 母はそんな事を言っていた。妻も同じような事を言った。「包まれる

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『哲学ってなんだ』ウィクショナリーよぅ、哲学ってなんだ道理(ってなんだ)の追求か?物事(ってなんだ)の正しい(はぁ?)筋道ぃ?(を探すのか?)(はぁ?)一切の事物(ってなんだぁ)の理を探せ!(なにぃ?)物事(はぁ?!)ぉ?(メビウスリングの道路の上を無限“

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猫小説『至福の時』
2018年08月30日00:44

猫小説『至福の時』 眠い。私はいつだって眠い。しかし、朝はパッチリ目が覚める。夜食べ残したご飯を平らげて、家族が起き出すのをひたすら待っている。すると親父の足音がして、私の体のコンロに火が灯り、鍋がグツグツ言い始め、ついには鍋の蓋から湯気が

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猫小説『我が名は龍である』 この家に来て二ヶ月になるのだが、ふと気付いたのが、どこから来たのかという簡単な問いに対して答えられない事である。誰かに訊かれた訳でもなく、親に不満がある訳でもないので、どうでも良い話なのだが、おそらく以前居た場所

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『記憶漂流記』 陸地や船を水平線に探しながら泳ぐのだが、波に邪魔されて案外見えない。快晴の空に照らされた海の真ん中で一人、頭だけを出して漂っていると、これから起こり得る様々な出来事を思い起こして絶望の底に引きずり込まれる。 サメの歯は折れて

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詩『龍のえじき』
2018年06月26日07:58

『龍のえじき』龍にやられた。仔猫なんだけどね、その猫なのよ。別にどうってことなかったはずで、妻のために飼うはずが、とんでもない。床に這いつくばって、水皿をぺちゃぺちゃ舐めるフリしながら、龍が寄ってくるのを待つ。顔で体を撫でたあと、水をなめる

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SF小説『十年漂流』【前編】http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1967118998&owner_id=60260068SF小説『十年漂流』【後編】****** シートが前後に揺れているので、私は何が起こったかと目を覚ました。《アキラさん、目を覚ました?》 キャノッピーに見える景色

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SF小説『十年漂流』【前編】 天国への門は開かれ、由紀子は私を遺して去っていった。  私はロボットのように瞬きもせず、ただ突っ立って棺が火葬炉に入って行くのを見送っていた。「貴方は必ず私に会いに来てくれる。だからさよならは言わない。ゆっくりで

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小説『戦わない国』⑶
2018年05月27日09:38

『戦わない国』⑴http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1966757144&owner_id=60260068『戦わない国』⑵http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1966757332&owner_id=60260068『戦わない国』⑶【現】父と息子と[後半] テレビもスマホも無い、安全に囲

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小説『戦わない国』⑵
2018年05月27日09:29

『戦わない国』⑴http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1966757144&owner_id=60260068『戦わない国』⑵【夢】謀反計画 気づくと、竜車から見える景色が変わっていた。そこは、木造の建物が並ぶ軍の駐屯地になっていて、多くの兵隊が行き交っている。そ

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小説『戦わない国』⑴
2018年05月27日09:12

『戦わない国』(1) 昭(アキラ)は毎晩夢を見る。物心ついた時からそうなのだが、次の夢は、必ず前回の続きから始まるのである。【現】昭の家族「昭さん、朝、寝汗でパジャマがビショビショだったでしょう?疲れてたのね、今日一日休んでどう?疲れは取れた

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『社長さんいらっしゃい!』〈そんなわけで今回は、オープニングセレモニーの最中ですが、当社の社長が未だ決まっておりません。式次第では、新社長による《社長挨拶》となっておりますので、どなたか、新社長になって社長挨拶をしていただける方、どうかマイ

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短編小説『蝉の声』
2018年04月17日13:10

『蝉の声』 蝉の声が聞こえて、(まさかね) と思う四月。お坊ちゃんが自動車のマフラーに空き缶付けて走ってる音だろう、と思う意識を外から内に戻すと、スリッパを履く足元に少々寒さを感じる。エアコンの温度設定を上げようかと思っていると、玄関の向こ

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短編小説『夜戯城にて』
2018年04月12日09:45

【一】合コン 人生で初めて合コンというものに誘われた。幹事は社内でもトップのイケメン川崎。彼にしては珍しいことだが、その数週間前に女に振られてしまっていた。それからというもの、彼は殆ど誰とも口を利くことがなかったのだが、突然彼から電話がかか

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『相手の身になる』
2018年04月09日11:27

『相手の身になる』 朝食のイワシを噛みながら、イワシは網に掬われて船底で鮨詰めにされるまで、逃げまくって懸命に生きて来たのだろうと思っていると、裏庭で「チュン」。 続いて、スズメは何を考えながら生きているのだろう、と思っていると、小学生の頃

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『支離滅裂超新星爆詩』宇宙の頂に生える青草の多くは巨人の腹に寝そべって星空に枝を張る大樹になった夢を見る流れ星に乗って目を閉じると動き始めた過去と落ちていく未来との隙間で黒穴に浸かった時間が過ぎていく鼻唄を噛む音が聞こえるうちは惑星は一度だ

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『ハインリッヒ軍曹』 小学生時代、私が恋していながら胸中を打ち明けることのなかった女の子がどんな顔をしていたのかを確かめるため、滅多に入る事のない書斎の隅にあるアルバムを取ることがあって、まず女の子の顔を見つけるのだが、好きだった理由を探そ

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四年前に書いた物(再掲)
2018年01月11日21:31

『人は神様と握手出来るか』14/09/19 僕らが行くことの出来る遠い崖っぷちに 神様がゆらゆらと立っている と思うのは間違いで 僕らが崖っぷちに辿りついた地点から さらに遠く臨んで全く見えないところに 神様はいるんだろう と思うのもまた間違いで 神様は実

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