どこでも同じ塩素の匂い
ただ両耳を圧迫する騒然のリズム
隣の逆三角形どもがやるように
骨に垂れさがった筋肉を
意味もなくゆらしながら
何事かにシランぷりをきめ
白い時間を待ちつぶす
有無を言わせない掛け声が
静かにみじかく発せられる
カカトから骨を伝わる振動
青く白い波が俺を飲み込もうと近づく
高いところでサラシ者になった俺は
全てを消去しようとしているが
時の鎖がギリギリと音をたてる
“ Yoh―it ”
二つ目のかけ声に心臓が耳元でささやく
誰もが人形のフリをしている
号砲―――
猛獣が一斉に空へ襲いかかる
キバは水を突き破り
世界が一変する
青く薄まった色に包まれ
弾ける音が遠のいていく
俺の生命だけが耳できしむ
底のラインが導くとおり
俺は腕をおろしわずかな瞑想に入る
今、時を切り、水を蹴り、
腕で水面を引き寄せる
再び元の世界にもどり
音が渦を巻く
一瞬で空を吸いこみ
向かいくる二つの世界を縫いながら
ただただ前へ
限界であえぐ自分と闘って
何が得られるのかなど
考えたことはない
ハッキリと分かっているのは
この先に待ちかまえるものが
ただの壁だということだけ
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