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2025年07月31日23:46

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映画『木の上の軍隊』~1

7/30(水)、シネマイーラ浜松で『木の上の軍隊』を観る。

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大元は沖縄戦であった実話から劇作家井上ひさし(1934-2010)が書こうとしていた舞台台本だが、完成を見ずに井上は75歳で亡くなった。
その後、井上の遺した設定やメモを基に、蓬莱竜太が書きあげ栗山民也の演出によって、2013年に初演を迎えた。
私は、2013年のこまつ座による初演ツアーのライブ収録を、NHK-BSの「プレミアムステージ」で観る事ができた。

これら制作の経緯とあらすじについては以下のレポートを参照頂けたらありがたい。
・「演劇『木の上の軍隊』/栗山民也」(2015.2.24記)
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1939211311&owner_id=3341406

今回は、この映画とこまつ座の公演との違いについて書いておきたいと思う。

脚本・監督は平一紘、1989年沖縄に生まれ、同地を拠点に活動している。
沖縄戦を題材にした映画は、『ひめゆりの塔』(1953)以来14本に上るが、全て本土出身の監督、またはハリウッド製作である。平は、かねてより沖縄の作り手により、沖縄人の視点で沖縄戦を描きたいと考えていた。
結果、本作はスタッフと主人公以外のキャストの多くが沖縄県人となった。
こまつ座の井上麻矢社長(井上ひさしの実娘)の「沖縄の人から見た『木の上の軍隊』が見たい」という言葉が、実現への後押しとなったとの事だ。

まず、平は2人の主人公、本土出身の陸軍少尉 山下一雄(堤真一)と沖縄から出た事のない新兵 安慶名(あげな)セイジュンの背景を描きだしたいと考えた。2人が、ガジュマルの大樹の上に2年も隠れ棲んでいたにも関わらず、なかなか理解し合えないのは何故だったのか、その訳を明らかにしたかったのである。
演劇では、冒頭からステージ中心にガジュマルの木があり、既にその上に2人の主人公はいる。そしてもう1人、語り手の女性が登場する。彼女はガジュマルの木に棲みつく聖霊であって、全てを知っている。舞台中を動き回り、場の説明や2人の心中の解説もする。
映画ではこの聖霊の語り手はいない。

物語の場は沖縄本島の北西9kmにある伊江島である。
終戦処理のために重要な役割をした「緑十字機」は、木更津から伊江島、伊江島からGHQのいるマニラ、マニラから伊江島、伊江島から東京に戻る途中で遠州灘海岸に不時着した、その伊江島だ。

日本軍は1944年、伊江島に飛行場を造り南からやってくる連合軍の防波堤にしようとした。
この建設のために駆り出された伊江島島民と彼らを強引に働かせようとする陸軍の様子から映画はスタートする。
本土を守る事を軍の絶対的使命として島民に相対する実務トップが山下少尉で、島での暮らしが大事な島民とぶつかる。島民の中に、安慶名やその隣人らがいる。
だが、この目論見は、連合軍のスピードで壊れてしまう。連合軍艦隊は同年10月には沖縄近海に押し寄せ、空襲が始まる。
山下少尉ら陸軍上層部は、完成したばかりの空港が連合軍に使われる事を避けるため、島民に滑走路の破壊を命ずる。島民の気持ちと山下少尉らとは決定的に断絶する事となる。

連合軍が伊江島に上陸、陸軍と島民は逃げ惑う。その中で、安慶名の母と妹、脚の悪い親友も命を落とす。
逃亡するうちに、日本人は次第に減り、遂に山下と安慶名の2人となる。切羽詰まった2人はガジュマルの大樹に登り、葉陰に身を潜める。
ここでようやく演劇版のスタート地点に辿り着く。

このガジュマルの木は「ニーバンガズィマール」と名付けられ、今も伊江島の「命の木」としてミースィ公園に移植されて生き残っているそうだ。

その後も頻繁に大砲や銃の音がし、連合軍の兵士達が木の根元迄やってくる。そして上空を低く飛ぶ戦闘機の轟音。
息を潜める2人。
夜には対照的に、風の吹き抜ける音、虫の声など。
雨は降り始めたら長い。
木の上でも、安慶名は山下を「上官」と呼び、山下の発言は絶対的な命令である。遠からず本土から援軍がやってきて、連合軍を蹴散らす筈だ、しばらく待つ事にする、と。
会話は一方的で、噛みあわない。
山下は体面を重んじ、国の大義が何より大事だ。

2人はまず持っている水や食料、銃弾などを確認した。
だが、手持ちの食料はじきに底をついた。
飢えが始まった。
周辺に転がる死体などから取れる物は取った。
食べられる植物や昆虫やカエルなど、地元の安慶名は詳しかった。木の実を日数かけて水で毒抜きし食べる事もあった。
眼が回り、体力の消耗を避けひたすら寝るばかりの日もあった。
援軍は来る気配もなく、連合軍側は飛行場を整備し陣地を拡げていった。

(続く)
 
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